想い。
研究対象として観察してみたい
其の人物の云う事に私は心を奪われていた。【幽霊】とは【想い】の結晶である。そして…。その【想い】とは死んだ側の人間では無く、此方側の【想い】なのだろう。【想い】が重なれば重なる程に、其のモノの【名】と【形】は明瞭化して、姿を成す。
心霊スポットやパワースポット。そう云ったモノが解り易いのかも知れない。【歴史】も【想い】の重なりである。文献、手記、口伝。どれも人の【想い】が創造したモノ…。そうなると…。【想い】が強まれば強まる程に重なれば重なる程に、其の姿は濃密になり、虚構は現実へと近付くのだろう。
私は幽霊を製造しようと考えた。だが製造するだけでは無く、ソレを研究対象として観察してみたいと強く【想った】。
十九歳の頃。両親が事故で亡くなった。悲しかった。悲しかったのだけれど両親は私の心の奥で生き続けているのだと強く感じれば、寂しくは無かった。両親は私の事を大切に【想って】いてくれたのだろう。莫大な遺産を残してくれた。
私は、その遺産で二軒の家を郊外に建てる事にしたのだった。隣接した二軒の建物。一軒は普通の家であり、もう一軒には少し細工を施してみたのである。
其処に四人家族が越してきた。
四ヶ月程経過した頃だった。其の家族は徐々に徐々に狂っていったのである。口を揃えて【幽霊】がいると怯え出した。階段の上に黒い影が視えたのだそうだ。ソレは日を重ねる程に濃密に存在を現していき、軈ては命を狙ってくる様になったのだと聞いた。
もう少しで【幽霊】が産み堕とされる筈だった…。虚構だけではなく、現実と虚構が交差する筈だった…。
然し、ソレは叶わなかった。隕石の落下。十分十秒。東京は眩い光に覆われて時間を止め、私は深い夢を視たのである。




