【…】の名の下に命を奪う。
正義を行使し死刑執行する
階段を上り、元いた部屋へと向かう。心臓は平静に鼓動を刻んでいる。心地良い律動だった。
部屋に戻るとシャコ貝の貝殻は砕け散り、中身が散乱していた。紅く、温かい液体が床を覆い尽くしている。
『父さん。母さん…。』
ギリッと俺は奥歯を強く噛み締めた。錆びた金属の匂いが口腔を満たし、心音の律動は乱れていく。
グガガガガッ。と蝙蝠は発声した。
「どうした?話せなくなったのか?ソレは良かった…。御前、五月蝿いんだよ。」
蝙蝠は涎を撒き散らしながら此方へと歩みを進め、噛み付こうとして加速する。俺は中心軸を保った儘に右後方へと肩をずらして攻撃を躱した。
【咎】の名を謳う。
【キリング・イン・ザ・ネーム・オブ】
俺は囁く様に言葉を漏らした…。右手に紅黒く錆びた刃の無骨な剣が顕現し、左手には純白に光り輝く刃の美しい刀が顕現した。右手の剣の柄は闇よりも昏く、左手の刀の柄は燃える様に紅い。両の柄からは触手の様なモノが数本生えており、指や腕の神経に食い込んできた。
蝙蝠は殺気を感じ取ったのか…。一歩退く。そして反響定位と云う20kHzから100kHz以上の超音波を吐き出してきた。普通なら人間が聞き取れる範囲以上の超音波である。然し蝙蝠は人が聞き取れる程に調整し、その音波に【ある言葉】を波に変換し放っていた。要は簡易的な暗示効果のある超音波として放っているのだった。
「しーっ。静かに…。」
俺は口に人差し指を添える。
「死ね。とか簡単に云うなよ。単なる言葉でも人を殺せる時もあるんだ…。」
俺は右手に握った剣を蝙蝠の左首筋に当て、引き抜いた。ソレは蝙蝠の声帯を引き千切っていく。
「痛えだろ?この剣の刃…。鋸の様な刃になってんだよ。細胞レベルで損傷を与え、多少の回復力でも修復出来ねぇ程に切り刻む…。名を鋸挽き。」
そして俺は左手に握った刀で蝙蝠の右肩へと袈裟斬りをする。刀は中央付近で止まった。
「この刀は高速で振動させる事が出来る…。例え途中で止まっても…。振動させれば…。」
止まっていた刀は蝙蝠の肉体を切り裂いていく。蝙蝠は力の限りに悶え叫ぶ。
「御前は被害者だった…。可哀想だとは思うよ…。けど…。憎しみに囚われ関係無い者を巻き込んだ加害者となったのなら…。話は別だ…。」
脳裏に浮かぶのは両親の笑顔。
「しーっ。静かに…。この刀の名は梔子。死んだら少しは静かになるか?」
蝙蝠の肉体が二つに裂かれた。
「正義を行使し死刑執行する。」
無数の斬撃が乱れて舞った。




