響と静寂。
見つからない様に静かにしてね。
挟み打ちされる状況で背後にいるシャコ貝の化物が両親だと解った現在でさえ酷く冷静に分析している己に気付いた。
何故だろうか?長い年月離れ離れだったからなのだろうか?俺の内では他人と変わらぬ感情になっているのだろうか?
「しーっ。静かに…。」
片言の様にシャコ貝は蝙蝠に云う。
「静寂が怖がるでしょ?」
優しい聲で、そう続けた。
すると此方を視たシャコ貝は俺に云う。
「しーっ。静かに…。見つからないように静かにして隠れてね…。」
『そうか…。そうだったのか…。』
俺は過去の言葉の意味を識った。
『俺を護る為だったのか…。』
家族は自分への危害を恐れていたのでは無かった…。俺に危害が加わる事を恐れていたのだ。俺が見つからない様に。俺の為に言葉を紡いでいたのだ…。家族は家族としての正しい道を歩んでいた…。無意識に想いを解ろうとせずに拒み、道を踏み外していたのは俺自身だったのだ…。
黙れ。と叫び、蝙蝠は鋭い鉤爪を俺に向かって振り下ろした。シャコ貝は俺の前に移動し、殻で攻撃を受ける。その殻に亀裂が生じ、ドロリと赤い体液が流れた。
「早く…。逃げて…。意識が保てなくなってきてる…。もう貴方も響も護ってあげられないみたい。だから…。逃げて。静かにして。隠れてね。」
シャコ貝は俺を突き飛ばした。その瞳からは涙らしき液体が流れている。俺はクローゼットへと向かい、姉である響の腕を取り、階下へと降りていった…。




