挟撃
貴方が死ねば良かったのに。
崩れ落ちたマンション。燃えさかる炎。ユラユラと立ち込める煙。マンホールから噴き出す水。逃げ惑う人々。フィクションで語られる様な化物達。地獄絵図だった。
突如として窓の外が昏くなる。影が在った。その影は双頭の蝙蝠で此方を視て牙を覗かせている。上半身は蝙蝠の形態なのだが下半身は人間の形態の様だった。突如としてソレは襲い掛かってくる。キリキリと頭が痛み、本能が俺に告げてくる。【眼の前で浮遊する蝙蝠は元が人間である事。】そして…【先程のシャコ貝の化物が元は両親である事。】を…。
蝙蝠は口を動かし拙い言葉を紡いだ。
「何で貴方が…。生きていて…。私の娘が死んだのよ?貴方が死ねば良かったのに…。ねぇ?何で?」
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?…。蝙蝠は壊れた玩具の様に言葉を繰り返す。
「知らねぇよ。正論吐いてるつもりか?」
「私が云う事こそ正しいのよ。貴方が生きていられたのって…。お気に入りだったからじゃないの?穢らわしい。他の子の拉致監禁やら解体作業やら手伝っていたんでしょ?貴方が死んでれば良かったのに…。だから…。」
死んでよ。と蝙蝠は云う。
「しーっ。静かに。」
不意に後方から聲が響き、俺は振り返った。背後にシャコ貝の化物、つまりは俺の両親が居たのだった。




