聞こえない聞いてない
∼前回のあらすじ∼
魔法陣を踏みました
崩れ落ちた瓦礫の山を、上から見下ろす、王女。
「あ~これは…死にましたね・・・」
「勝手に…殺すな!」
積み重なった瓦礫に埋もれていたスパイが、上澄みの瓦礫を吹き飛ばして、姿を現した。
動けないスパイは、身体を捻りながら、瓦礫に埋もれた下半身を引き抜く。
「おかしいだろ!魔法を無効化されているに、こんな大掛かりな仕掛け!」
「あ──城内に仕掛けられた侵入者撃退対策用の魔法陣は、魔法無効化の魔道具と魔力が繋げられているので、無効化されないんですよね──」
”まだ”隠し事をしていた王女に、呆れた表情を向ける。
「・・・国防に関わる大事な情報だから、俺には隠していたわけか?」
「いえ、隠していたわけでは無く…皆、周知の事実でしたので…あなた以外は…」
言葉を濁す王女は、どこか気まずそうに、スパイから顔を背けた。
「もしかして俺・・・忘れられ/
「静かに!」
【バタバタ】
音を聞きつけた衛兵の近づいて来る足音が、廊下に響く。
崩れた廊下の先から見えない様に、二人は物陰に身を潜めた。
剣を持った兵士が二人、崩れかけた廊下の崖に近づき、下を覗く。
「な、な、なんだこれ⁈」
『きっと、王女様の部屋に仕掛けられた魔法陣が、発動したんだ』
「ということは…近くに王女様が⁉」
『バカか、お前…たしかに王女様は、学力も魔法も”凡才”だが、自分が仕掛けた罠に引っかかるほどの”マヌケ”ではないだろ?』
「じゃあ、この魔法陣を発動したのは、誰?」
『おそらく、王女様の姉である”光の破壊者”か…王国最強の称号を持つ姉の夫か…或いは、その両者だ」
「そんな化物、二人だけじゃ相手にならないよ!」
『・・・よし、戻ろう』
「・・・怒られない?」
『命あっての兵士だ。よくぞ生き延びたと、王様なら仰って下さるだろう』
「・・・うん!王様なら許してくれる気がする」
『よし。見つかる前に逃げよう』
「そうだね!」
剣を鞘に納めて、廊下を走り戻って行く衛兵たち・・・
「あいつら・・・死んだな」
物陰から出て来たスパイが、怒っているであろう王女の方を、半笑いで見上げた。
遠くを見つめ、兵士が逃げた方向に、微笑みを向ける、王女。
「殺しは…しませんよ?だって私は”王女”ですから…」
「あ・・・怖ぇー」
言葉の裏に隠された怒りを悟り、背筋を凍せる。
「待てーい!」
兵士が逃げた廊下の方から、薄っすらと聞き覚えのある声が、薄ら笑いを続ける王女の耳に聞こえて来た。




