大きな一歩
∼前回のあらすじ∼
死にかけました
「問題…ありましたわね…」
表情を心無い笑顔に豹変させた王女が、スパイに近寄る。
「ま、ま、待て!待て!俺は、あ・・・」
王女に背中を蹴り飛ばされ、一歩前に押し出されたスパイは、足元の魔法陣を踏む。
真横の石柱に飾られた人型石像と目が合う、スパイ。
パカっと下顎を開き、口から火を噴き出す、石像。
迫り来る火を眺るスパイは、驚異的な反射神経で背骨を仰け反らせ、髪の先端を燃やしながら、噴出した火をぎりぎり回避した。
「・・・あら、逝けない‼手が滑っちゃった⁇」
無関係な手の平を広げて見せ、偶然の事故を装う。
放心状態のまま、焼き焦げた髪の先端を触り、火が消えた事を認識する。
「走馬燈が…見えた…」
「そのまま、部屋の扉まで・・・あ!」
スパイを部屋の扉とは反対側へ蹴飛ばしていた事に気づいた、王女。
「・・・身体強化の魔法を使えば、窓から飛び降りれるわよね?」
「あ、いや…その…魔法は使えない…というか…」
王女の威圧する視線を避けながら、詰まらせた言い訳を、宙に放つ。
「・・・そうでしたわね…扉から歩いて出るしか、ありませんのよね…」
我に返った王女は、歯を食いしばって、スパイに向けた足蹴りを堪える。
王女の怒りを静めようと、扉方向の魔法陣の前に進んで立つ、スパイ。
「お、俺が、魔法陣を発動させれば…」
「いいえ。どちらが、発動するかは…公平にじゃんけんで決めましょう」
「え⁈良いのか⁉」
冷静になった王女に、予想外の提案をされて、驚きの表情を見せる。
「ええ…何か、問題でも?」
「魔法陣の処理は、全て俺に任せるもんだと…」
トラップを踏んで、二回死にかけたこと、忘れたのかしら?
いい感じに、受け入れ体質へ染まって来てるわね…
「過去の事は、水に流しましょう。ここは”公平に”決着を…ね?」
本当は、踏みたくないけどね!
私が招いた事態を、協力者に全て押し付けるのは、流石に心苦しい
後々、文句を言われても面倒だし…
あとは、単純に…
「では、いきますわよ~じゃんけん・・・」
~30分経過~
水が入った盥に、火が燃え移った頭部を、勢い良く突っ込む。
「・・・ぷはっ、おかしいだろ‼」
「な、なぜだ…なぜ、一度も勝てない⁇」
この世界で、じゃんけんは、酒の席で行われる”お遊び”
じゃんけんを使った真剣勝負は、まず起きない
何故なら、大抵の勝負事は、魔法で決着がつけられるからだ
数多の戦を前世で経験して、じゃんけん必勝法を培った私が、負けるわけ無い!
「さあ、最後の魔法陣ですわよ!じゃんけん…」
「はぁ~また、俺の負けだ・・・まぁでも、これぐらいなら、飛び越えられっ」
扉と廊下の間に仕掛けられた、最後の魔法陣を跳び越える。
「あ、そういえば…最後の仕掛けは、絶対に回避不能な物にしたと設置者が…」
「は⁇」
廊下に着地したスパイの足元で、魔法陣が光を放つ。
【ゴゴゴゴゴゴ】
建物が、音を立てて、揺れを起こす。
廊下全体に亀裂が伸びて行き、スパイが降り立った足元から、地面が崩壊を始めた。




