無駄な時間
∼前回のあらすじ∼
穴に落ちました
「・・・最悪」
王女の視線の先には、草臥れた布切れを着た自由解放軍リーダーが、衛兵二人を行く手を阻んでいた。
「命を賭して己の職務を全うする。それが誇り高き王国兵士だ‼」
『え~っと・・・』
『どちら様ですか?』
「俺は…この国の副騎士団長だ‼」
「…は⁇」
『副団長様?』
地面に膝を付き、胸に手を当て、王が居るであろう方向に頭を下げる。
「我が王!この腑抜けた兵士の忠誠心、副騎士団長として我が徹底的に鍛え直します」
『ほ、本物だ‼』
衛兵たちは知らなかった~解放軍リーダーが、公爵屋敷襲撃の首謀者として侯爵に捕らえられ、投獄された牢から脱獄して来ていたことを・・・
状況が把握できてない崖下のスパイが、頭を抱えた王女に、大声で呼び掛ける。
「お~い…どうしたん・・・」
王女は、スパイを睨み、その空気が読めない口を閉じる様、微笑みで促した。
が、しかし、遅かった…
「あれは・・・王女様!王女様~」
声が聞えた方向に王女を見つけ、大きく手を振る、解放軍リーダー。
「・・・最悪」
ため息を吐き、崖下のスパイに、鬼の形相を向ける。
「・・・」
王女の威圧から逃れるように、そっと物陰に身を隠す。
解放軍リーダーが手を振る方向を注視する、衛兵二人。
『あれって・・・』
『お、お、王女様だ!間違いない!』
「この…バカ者‼」
物陰から颯爽と現れた騎士団長が、鞘に収められた剣を揮い、衛兵二人を眠らせた。
「王女様の現状は、教えたはずだ!身を隠している王女様を、危険に晒すな!」
「す、すまない…」
肩を落とし、萎れたように落ち込む。
部屋の壁を斬り崩して王女に駆け寄り、地面に膝を付く。
「王女様!申し訳ございません…私は、王様と女王様を…」
「詳細は後で…とりあえず…あれを回収して頂けますか」
跪く騎士団長を立たせて、崖下のスパイを指差す。
「あれは・・・何者ですか?」
「・・・ペットです」
「・・・ペット⁇」
騎士団長は、王女の発言に戸惑いを見せながら、どこからか持って来たロープを使い、スパイを引き上げた。
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スパイを引き上げたロープで、気絶させた衛兵を縛り上げ、城内の出来事を共有する。
「そう…あなた達は、公爵に捕らえられ、お父様とお母様は、人質に…」
「是非、我々に救出のお手伝いを‼」
「いえ、救出には行きません」
「はい?」
「人質を取られ、魔法が使えない状況で、武力制圧できると思いますか?」
「では、話し合いでの解決を…」
「怒り狂った公爵が、私達の話を聞くとは思えません。私達だけで、公爵を説得することは、不可能ですね…」
「ではせめて!護衛としてお傍に…」
「あ、結構です。これ以上、戦闘が起こるような場所には、関わりませんから…」
「一応、我々は強化魔法が使えますので、戦力にはなるかと…」
「ですから、要りませんと・・・はい?」
「このような事態に備え、日々/
「今、強化魔法が使えるって言わなかった?」
「それは…王国の防衛に関わる機密情報でして…」
横に立つスパイに、警戒の視線を送る。
「・・・ハウス」
「は⁈ハウ・・・あ~ちょっと、トイレに・・・」
王女の命令に従い、速歩で廊下から姿を消す。
「魔法の発動には、魔力を溜め込む必要がある事は、当然ご存知ですね」
「ええ、もちろん…」
へぇ~知らなかった~
多分…魔法の基礎的な知識だと思うけど…
私、実戦派だったからな~(座学の教師から逃げ回っていた)
「魔道具は、範囲内の魔力を常に吸収し続けている」
「ですから、魔道具の発動中は、王都で魔法が使用できないのです」
「しかし、魔力発動に時間を必要としない魔法であれば、このように…」
風魔法で旋風を起こし、小さな竜巻を指先に創り出す。
「へぇ~魔力消費が少ない強化魔法でしたら、使えるという訳ね・・・」
廊下の曲がり角で、盗み聞きしていたスパイの目前に立つ、王女。
逃げ出そうとしたスパイの後ろ襟を、強化魔法を使用した王女が掴み上げる。
「そう言えばあなた、瓦礫の山を吹き飛ばして、這い出ていましたわね…」
「あは、あははは…ただの奇跡です…」
首を吊り上げられたスパイは、どんな言い訳をしても無駄だと悟り、死んだ魚の目をしていた。
「・・・あ、そう」
スパイの襟を掴む手を離す。
「え・・・いいのか?」
「奇跡…なのよね?」
感情を消した優しい微笑み。
「あ・・・はい・・・」
王女の不気味な微笑みに、スパイは恐怖を覚え、顔を引きつらせた。




