目には目を歯には歯を
∼前回のあらすじ∼
本音が聞けました
「・・・あっ、あぁ~偽勇者の欠陥か!」
「ちょっと!」
言葉の意味に勘づいたスパイの口を、慌てて押さえる、王女。
少し離れた所に居るスパイの声が、義兄の聴力に届く。
「…欠陥?」
「よそ見をしない!」
姉に耳を引っ張られ、振り向こうとした義兄の視線が、姉の顔に戻る。
スパイを壁際に追いやり、真顔で睨む。
「・・・あなた、死にたいの?」
「・・・」
『どういう意味だ?』と、聞き返したいが、口を閉ざされているため、動かすことが出来ない。
「姉様…私は、姐様に聞かれて困るような話を聞いているのですか?」
「・・・」
『俺の言いたいことを、代わりに言ってくれて助かる』という素直な気持ちを、目の表現だけで、公爵娘に伝える。
「なんですの?その目は!姉様の言葉が理解できない私を、馬鹿にしているのですか⁉」
『伝わらねぇか・・・』
今までの言動を考えると、伝わるはずが無い。
「いいえ。これは、あなたを馬鹿にしたのではありません」
スパイの口を塞ぐ王女は、物事を冷静に見極めていた。
「これは、私の本音を見透かしたことで、今までの私の言動を、嘲笑っているんです!」
『冷静・・・』
言葉に出せない感謝が、あらぬ誤解を生んでしまった…
『たしかに、王女の為に、姉と義兄を犠牲にするのか!とは、思ったが…』
『誤解だ!俺の話を聞いてくれ!』
弁明を求めるスパイは、王女の腕を握りしめ、口元の手を引き離そうとする。
「押さえて!」
王女の言葉に公爵娘は、片手を突き出し、スパイの喉元を握り絞めた。
『・・・死ぬ』
手の力が弱まり、意識が薄れる。
「あれ・・・し、死んじゃった⁈」
王女は、口を塞ぐことに集中していて、スパイが、首を絞められていることに気づいていなかった。
「大丈夫です。気絶しただけ…だと、思いますわ」
姐様としか手合わせした経験が無い公爵娘は、手加減を知らない。
「顔に水を浴びせると、目覚めますわよ」
「あ・・・そうね・・・」
受け継がれた姉の血を感じる…
そして、”水を浴びせる”という方法に違和感を覚えない、自分が恐い…
「このまま、拷問して聞き出す方向もありですわね…」
「え…拷問?」
「ええ。これが口にしていた”偽勇者の欠陥”とは何か、聞き出そうと…」
「あーー大丈夫。大丈夫よ!偽勇者の欠陥は、お姉様も把握していますから…」
転移時のお姉様は、怒りにのまれて、我を失っていた
我を失った時、前後の記憶が曖昧になる事は、
いつぞやの姉妹喧嘩で、証明されている
だから、”欠陥”の記憶”も覚えていないと…思う!
「でしたら、安心ですわね…」
優しい微笑みが、笑顔の仮面へと豹変する。
「ですが…その欠陥を”義兄には”知られたくないと?」
「うっ・・・あは、あはは、あははは、あはははははは・・・」
何を発言しても見抜かれると判断した王女は、ただただ笑うしか、手段が無かった。




