忘却の彼方
∼前回のあらすじ∼
飛びました
「どうするのよ~」
胸ぐらを掴み揺らすが、既に、死の覚悟を決めた皇帝は、微動だにしない。
柵に刺さった未来が、王女の脳裏に過る…
「…ブラックボックス!」
後が無くなり、追い詰められた王女は、無駄だと知りながら、転移魔法を試みる。
【ドンッ──】
衝撃音と共に、辺りに舞う土煙…
「・・・あれ?生きてる?」
土煙から現れた二人は、柵槍から数メートル離れ、《ブラックボックス》の転移先に着地していた。
ここは、城壁の外…つまり、魔法無力化の範囲外!
無効化の結界は、王都に現れた反乱を想定して創られている
王都から少しでも外に出れば、魔法は使えたんだ!
魔道具を破壊しない限り、魔法は使えないと思い込んでいた…
「あーよかった~」
「・・・おい!いつまで、余に座っているつもりだ⁈」
安堵する王女の下で、口から血を吐き出して倒れた、皇帝。
「・・・ぷぅ、無様ね」
「貴様!誰のおかげで、生きていると…」
無下に扱われた皇帝は、怒り狂い、吐血する。
どうやら、柵槍への落下は避けられたが、
地面へ着地した時の衝撃は、残っていたらしい
転移魔法が使われた事を瞬時に判断した皇帝は、
時間魔法を使い、着地時の衝撃を、全て一人で受けた。
柵を避けたのは転移魔法だけど…一応、助けてもらったのだからお礼ぐらいは…
「・・・ありがとう」
至近距離で見つめ合う、二人…
「貴様・・・貧弱な体にしては、重すぎる!もっと、鍛えて…」
「お姉様、今です!」
「ああ!」
皇帝の背後に控えていたお姉様が、皇帝の頭上部を、拳で打ち抜く。
顔を上下に揺らし、白目をむいて倒れた、皇帝。
「あ・・・殺りすぎたか?」
「いえ、構いませんよ…どちらでも…」
城門が開き、武器を持った兵士が、一同を捕らえに向かって来る。
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「悠長な事している時間は無さそうだな…取り敢えず、隣街まで走るぞ!」
気絶した皇帝を抱え、走り出した一同の前に、光り輝く魔法陣が現れる。
「呼ばれて、飛び出て、帝国運送で~す」
「・・・なんですか、それは?」
「え⁉あれ?知らない?いや~知らねぇなら…忘れてくれ・・・」
予想外の反応に、恥ずかしくなり顔を背ける、帝国スパイ。
「・・・で、何の用ですか」
照れるスパイに冷ややかな目を向けながら、話しを続ける、王女。
「あ…ああ。我らの皇帝を迎えに来たんだが…どういう状況だ?」
「見ての通り、あの兵士から逃げている所です」
城門前に集まった兵士を指差す。
「そりゃぁ、丁度良い。”誰にも真似できない”新しい転移魔法を開発したんだ!」
「この魔法陣はな…」
説明をしながら、地面に魔法陣を書き始める、スパイ。
スパイを横目に、後ろに迫る兵士の列に目を向ける…
「・・・置いて行きましょうかね?」
「…ああ」
魔法陣を書くスパイを弱い足蹴りで小突き、隣街に向かって走り出す、王女たち。
「え!あ…待てよ!うぇ・・・」
地面に寝そべるスパイは、王女たちを追う兵士の列に飲み込まれて、踏み続けられた。




