ひとりでいい…
∼前回のあらすじ∼
囮になりました
巡回中の兵士を、全て、偽勇者に押し付けた一同は、王都を囲む城壁の門へと向かっていた。
「あの囮は、上手く機能したみたいですね」
露店が並ぶ街中を、堂々と歩く、一同。
「奴には、褒美を出さねばな!だが、ここをどう押し通るつもりなのだ?王女よ」
食べ歩きを楽しむ皇帝は、鉄格子の降りた城門と、それを見張る門番の兵士を指差す。
「彼らは、命令を忠実に守っているだけ。出来れば、手荒な真似はしたくないのですが…」
手の打ちようが無い状況に、頭を抱えて悩む、王女。
「ならば、賄賂を渡せ!」
「王国の兵士は、賄賂などに屈しない!」
家族へのお土産を買い、戻って来たお姉様が、皇帝の胸ぐらを掴む。
「ほう?先程、目先の利益に目が眩み、逃亡犯を見逃した者達は、王国の兵士ではなかったか!」
「あれは、私達の言葉を、信じた故の行動だ!」
「同じでないか!」
「同じではない!」
頭を近づけて、睨み続ける、二人。
「二人共、冷静に…騒ぎを起こすと、門番の兵士に気づかれますわよ」
間に割って入り、一度、落ち着く様に促す。
「ふん!賄賂以外に、何か妙案があると?」
「…飛ぶ!」
「・・・」
正常なお姉様を期待していた王女は、見た目通りの暴君に落胆する。
「・・・面白い!」
露店に立てかけられた木板に、手を掛ける。
「え⁉待って/
手に持った木板を、城壁めがけて投げ始めた、皇帝。
恐ろしいスピードで飛ばされた木板が、次々と、硬い城壁に突き刺さる。
「ふう~こんなものか!」
目の前で起きた信じられない後景に、思考を停止させ、再起動する。
「魔法は…使えないのよね?」
「余を、常人と同列に見るなよ!」
「三属性を操る魔法の負荷は、常人の肉体では耐えられぬ」
「それ故、余の肉体は、頑丈に鍛えられているのだ!」
…全く理由になって無い!
魔法の負荷で、頑丈に鍛えられた?
じゃあ、六属性を操れる私に、同じ事が出来るとでも?
「で、あの板をどう使うの?」
騒ぎを聞きつけた兵士が、城門に集まり始める。
「時間が無い…掴まれ!」
「はい?」
城壁を見つめる皇帝に、雑に抱きかかえられた、王女。
地面を蹴り飛び、建物の屋根に着地する。
そのまま屋根を伝い歩き、城壁に刺した木板に飛び移った。
足を乗せた木板に、亀裂が入る。
「い、今、嫌な音がしましたよね?ね!」
「暴れるな…落とすぞ⁈」
「…はい」
慌てふためいていた王女は、死んだ魚の様に、全身の力を抜いた。
木板を足場に城壁を登る皇帝は、城壁通路の兵士に気づき、足を止める。
「このままでは、打ち落とされる…飛び超えるぞ!」
「え?」
皇帝の上体が沈み、木板が撓る。
木板を折り飛び、城壁の真上へ昇る。
「いや~~~!」
城壁を超え、上空でしばらく停滞する、二人。
「・・・あ!着地の事を考えていなかったな?」
「はぁ⁉」
耐空が終わり、落下が始まる。
「あ~あ。何で、こうなるかな?」
落下地点を確認した王女の目には、兵士が立てた木の柵槍が置かれていた。




