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勇者が死んだ王都では  作者: 真知コまち


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63/68

 ひとりでいい…

∼前回のあらすじ∼


  囮になりました


 巡回中の兵士を、全て、偽勇者に押し付けた一同は、王都を囲む城壁の門へと向かっていた。


「あの囮は、上手く機能したみたいですね」

 露店が並ぶ街中を、堂々と歩く、一同。


 「奴には、褒美を出さねばな!だが、ここをどう押し通るつもりなのだ?王女よ」

  食べ歩きを楽しむ皇帝は、鉄格子の降りた城門と、それを見張る門番の兵士を指差す。


「彼らは、命令を忠実に守っているだけ。出来れば、手荒な真似はしたくないのですが…」

 手の打ちようが無い状況に、頭を抱えて悩む、王女。


 「ならば、賄賂を渡せ!」


  「王国の兵士は、賄賂などに屈しない!」

   家族へのお土産を買い、戻って来たお姉様が、皇帝の胸ぐらを掴む。


 「ほう?先程、目先の利益に目が眩み、逃亡犯われわれを見逃した者達は、王国の兵士ではなかったか!」


  「あれは、私達の言葉(動かない)を、信じた故の行動だ!」


 「同じでないか!」


  「同じではない!」

 

 頭を近づけて、睨み続ける、二人。


「二人共、冷静に…騒ぎを起こすと、門番の兵士に気づかれますわよ」

 間に割って入り、一度、落ち着く様に促す。


 「ふん!賄賂以外に、何か妙案さくがあると?」


  「…飛ぶ!」


「・・・」

 正常なお姉様はんだんを期待していた王女は、見た目(よそう)通りの暴君かいとうに落胆する。


 「・・・面白い!」

  露店に立てかけられた木板はいざいに、手を掛ける。


「え⁉待って/


  手に持った木板はいざいを、城壁めがけて投げ始めた、皇帝。

  恐ろしいスピードで飛ばされた木板はいざいが、次々と、硬い城壁に突き刺さる。

 「ふう~こんなものか!」


 目の前で起きた信じられない後景に、思考を停止させ、再起動する。

「魔法は…使えないのよね?」


 「余を、常人と同列に見るなよ!」

 「三属性を操る魔法の負荷は、常人の肉体では耐えられぬ」

 「それ故、余の肉体は、頑丈に鍛えられているのだ!」


 

 …全く理由せつめいになって無い!

 魔法の負荷で、頑丈に鍛えられた?

 じゃあ、六属性を操れる私に、同じ事が出来るとでも?

「で、あの板をどう使うの?」


 騒ぎを聞きつけた兵士が、城門に集まり始める。

「時間が無い…掴まれ!」

 

 「はい?」

  城壁を見つめる皇帝に、雑に抱きかかえられた、王女。


 地面を蹴り飛び、建物の屋根に着地する。

 そのまま屋根を伝い歩き、城壁に刺した木板はいざいに飛び移った。


 足を乗せた木板はいざいに、亀裂が入る。

「い、今、嫌な音がしましたよね?ね!」


 「暴れるな…落とすぞ⁈」

  

「…はい」

 慌てふためいていた王女は、死んだ魚の様に、全身の力を抜いた。


  木板はいざいを足場に城壁を登る皇帝は、城壁通路の兵士に気づき、足を止める。

 「このままでは、打ち落とされる…飛び超えるぞ!」


「え?」

 皇帝の上体が沈み、木板はいざいしなる。


 木板はいざいを折り飛び、城壁の真上へ昇る。

「いや~~~!」


 城壁を超え、上空でしばらく停滞する、二人。


 「・・・あ!着地の事を考えていなかったな?」


「はぁ⁉」


 耐空が終わり、落下が始まる。

 

「あ~あ。何で、こうなるかな?」

 落下地点を確認した王女の目には、兵士が立てた木の柵槍が置かれていた。

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