63話 住人の消えた街3
リーシュルトの、少なくとも地上部分には人間の気配はないといえる。これは確実だ。
ならばやはり、転移系の魔法が使われたのか……?だとしたらメルヴィスが見逃したということだ。世界最強の魔法使いの目に留まらずに転移を行ったというと、相手は相当な手練である。
「……そもそも、あの老害の魔法は何なんだ?」
ふと、『最強だから』で片してしまっていた疑問が湧き出る。
俺たちに降りてくる任務はすべてメルヴィスからのものだ。そして今回のもそうだが、内容からして発生・確認から任務が下りてくるのにタイムラグは感じられない。
つまりメルヴィス自身が観測し任務を与えてるわけなのだが。
「俺が知ってるだけで三種類の魔法をメルヴィスは使ったことがある」
六年前のあの時に見た、傷ついた俺とハルを癒した治癒系の魔法。そしてその後メルヴィスの魔法により城に移動させられていたことから、おそらくは転移系の魔法。さらにはメルヴィスの執務室にいた俺を持ち上げ窓から放り出した重力系の魔法。
系統が全くバラバラの魔法だ。
『多属性使いで非属性魔法を使うものはいない』
それが研究者たちが何年も前に導き出した結論だ。
属性魔法よりも器の容量を食う非属性魔法は、複数所持することはできない。
これに加えてさらには感知系の魔法も所有しているとなると、さすがに非常識と言わざるをえない。
「……そういうものだと言われたら否定できないのが恐ろしいところだな」
いくつかは魔道具を使っているという可能性もなくはない。
「王サマに聞けば答えてくれるかな」
そんなことを考えながら歩いていき、俺は当たりををつけた場所にたどり着く。
「まぁそれも俺の首が繋がっていたらだが。さっさと終わらせて帰ろう」
当たりをつけた場所、それはこの街の中心部にある広場。周囲からは相変わらず何の気配もしない。
「当たりって言っても、何か証拠を見つけたってわけじゃないんだが……だいたいこういうのは」
広場の中心に立ち、真下に向けて魔力を貯める。
「地下にあるって相場が決まってる」
『雷哮』発動。
爆音と地響きとともに広場の石畳が砕ける。
土埃が晴れると、石畳どころか地下数十メートル以上の深さの空洞が姿を現した。
「ビンゴ。思ったより広いな」
ほぼ当て勘で街の中心に穴をあけたが、どうやらこの街の地下には想像以上の空間が隠れていたようだ。
だが困ったことに、地下空間は相当な広さで一度中に入ったら、この穴からは出られそうにない。
空を飛べるノロマたちを待つべきか。時間を優先して先に飛び込むべきか。
「空間があるならそこに行き来する道があるはず。中にも大した気配はないし、行くか」
念のため球体状の水を展開し防御を固めから穴に飛び込む。
高速で流れていく岩肌を眺めつつ、外套のフードと口元の襟の位置を調整し出来るだけ肌が見えないように隠す。
すでにだいぶ上方へ行ってしまった穴から差す光が、かろうじて地下空間の底を照らしてくれる。地面との距離を測りかねることは無い。
下手に着地して怪我をするのも嫌なので、水球を作ってダイブすることにした。
ざぶんと、勢いよく水に入り、完全に勢いが死んだところで水球を解除し地面に着地する。
この外套には対魔法効果が織り込まれているので多少の水は弾いてくれる。
「ていっても、隙間から入っちゃうなら大して意味ないんだよなぁ……はぁ」
同じく対魔法効果が施されたブーツを脱ぎ、中に入った水を吐き出した。




