61話 住人の消えた街1
5日後、王が帰還するという報せはすぐに王都中、ひいては近隣の街へ広がり、住民たちも祭りだ祭りだと賑わいだした。
城に務める騎士たちや文官もようやく帰ってくる国王と盟友国である亜人国の竜王を迎えようと、城の掃除をしたり歓待パレード用の演武の演習をしたりと、いつにもまして忙しそうにしている。
そんな中、俺たちはというと。
「チッ。街はお祭り騒ぎだって言うのに、なんだって俺たちはあんな街に行かなきゃいけないんだ」
はるか前方には距離故に霧にかかっているが横に広がる壁……街の城壁が見える。
ドラムのじいさんと別れた後、メルヴィスから王帰還の報せを受けた直後、俺たちは再び夜空色の小鳥から手紙を受け取っていた。
内容はとある街の住民が一夜にして消え去ったので急遽調査してこいという任務の手紙だった。
別に任務自体は構わない。戦闘ならハルもいるし、調査や潜入なら俺がやればすぐ終わる。そう思っていた俺達だったのだが、問題はその街の場所だった。
「まさかリーシュルト……ほぼ王国最南端とはね。さすがに五日で往復は難しいかもね」
そう。俺たちは王が帰還する前に王都に戻っていなきゃいけない。なぜなら王が俺たちと会うことを望んでいるからだ。
他人に無礼だの失礼だの思われようが別に構わないのだが、その無礼を働く相手が王になると話が変わってくる。最悪首が飛びかねない。
「そうだな。てことで、お前も置いていく。じゃ」
すでに飛行速度が遅いルシェルを突き放して速度優先で駆けていた俺たち。
ここで俺はハルを置き去りにすることを決めた。
「気を付け―――」
ハルのお世辞を聞き流し、俺は全開で地を蹴った。
◇
「ふぅ……ようやくか」
全速力で走り続けて丸三日。ようやく到着した目的地リーシュルト。
明け方だというのに街からは確かに人の気配が感じられない。
当然開ける人間もいないので城門は締め切られているので、仕方なく二重強化で疲弊しきった足を酷使して城壁を飛び越える。
「よっと……まずは飯だな。さすがに腹が減った」
適当な店の玄関を蹴破り窓際に並べてあるパンを何個か頂く。
しけっているが、まぁいい。
店の椅子にどかりと座ってパンを頬張りながら、懐から任務内容が書かれた手紙を取り出し、改めてこの街の惨状と俺たちの現状を整理する。
住人が消えたとメルヴィスが認識したのは今から三日前。というかこの手紙を受け取った瞬間。そして国王が帰還するのが五日後。
夕方に任務を受けた俺たちはそのまま王都を達ち、ほぼ三日走り続けてリーシュルトに到着。今は三日目の朝方。つまり俺たちに残されたタイムリミットは今日を含めてあと三日。三日後の朝には王都に国王よりも先に戻っていなければならない。
正直に言うと不可能だ。今から帰っても間に合うか怪しい。
「さすがにメルヴィスからも説明があると思うが、それがあってもせいぜい一日猶予があるかどうかってとこか」
実のところ、俺とハルは今の国王に会ったことが無い。じいさんが生きていた頃はあの森からほとんど出ることは無かったし、じいさんの死と行き違うように王は国を発ったからだ。
ただ、噂で聞く評判はそう悪いものではなかった。賢王だとか天才とか歴代最高のカリスマ王!!なんてのも見たな。
「今は遅刻程度でお怒りになるような王サマじゃないことを祈るしかないな」
シン君「払う人間もいないし当然金は払わない」




