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無能だと言われて実家を追放されたハズレ職【人形術師】による成り上がり擬似英雄劇  作者: カムシロ


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6/8

話し合いをしたという事実が大切

 宿屋で目を覚ました俺は身支度を済ませてから出る。今日は冒険者としての活動はなく休みだ。だが、俺にはこの後大事な用事がある。昨日の打ち上げの席で約束した、ルイナと話し合いをするというものだ。


 ルイナが泊まっている宿に向かってしばらくすると目的の宿屋が見えてくる。

 昨日の夜はかなり飲んでいたのでどうせまだ寝ているだろう。

 宿屋に入り受付に立っているおばさんにルイナへの伝言を頼む。

 今日の話し合いの場所と一応時間も伝えておく。快く受け入れてくれたおばさんに感謝の言葉伝えた後宿屋を出て一足早く集合場所へと向かい待つことにした。


 ◆◆◆


 話し合いの場所とへと到着し、あたりに人の気配がないかを確認する。あえて人気のない場所を選んだのはいくつか理由があるが、一番の理由は勇者であるエマのパーティーメンバー同士が言い争いをしている姿を他の人たちに見られてしまわないようにするためだ。もし、言い争いをしている姿を見られてしまえば、勇者としてのエマの格を下げてしまうことに繋がりかねないからだ。


 どうやってルイナに話を切り出そうかと考えていると人が近づいてくる気配を感じる。

 角の方を見ると姿を現したのは予想通りルイナだ。

 予定の時間よりもかなり早い時間で驚く。てっきり寝ていると思ったが違ったようだ。


「こんなところを話し合いの場に選ぶなんてどういうつもりなのかな? まぁ、人気のいない場所はボクにとっても好都合かもね」


 薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。拳が届きそうな距離まで来ると足を止める。

 俺の身長は高い方であることもあり、こうやって近づくとルイナとの身長差を改めて実感する。

 俺よりも小さな身体だが、俺を遥かに凌ぐ身体能力と腕力を兼ね備えている。ルイナがその気になれば素手で俺を殺すことすら出来るだろう。


 唾液を飲み込み喉を鳴らす。ルイナの腰におさめられている短剣が無駄に存在感を放っている。


 一呼吸置いて口を開く。


「先にあらためて言っておくが、俺にこのパーティーを抜けるかはない」


「へー……」


 ルイナの視線が鋭くなる。


「理由を聞いてもいいかな?」


 緊張で空気が張り詰めているような感覚に陥る。そんな空気を壊すかのように言葉を発する。


「理由は簡単だ。このパーティーには俺の存在が必要だからだ」


 若干の沈黙の後、ルイナが吐き出すように笑い始める。


「あはははははっ、何を言い出すかと思えば……『俺が必要』? あはははははっ、どうしたらそんな馬鹿な考えに至るんだよ。呆れを通り越して笑うしかないよ」


 腹を抱えて大笑いするルイナを黙って見つめる。


「お前は無能じゃなくて道化だったんだね! あはははははっ」


 ずっと笑い続けていたルイナがようやく落ち着く。その間には笑いすぎて涙まで出ている。


「あはははははっ、はぁ……それで? 他に理由はある?」


「ない」


「そっか……」


 そう言って俺に背を向けながら歩き始める。


「どうしてもこのパーティーを出て行くつもりはないんだよね」


 少し離れたところで足を止める。


「あぁ」


「残念だよ。ボクもこんなことはしたくなかったんだけどね」


 次の瞬間、振り返ったルイナが物凄いスピードでこちらに詰め寄ってくる。その他にはいつのまにか抜いた短剣が握られている。


 反応し距離を取ろうと思った時には既に懐に入られてしまっていた。この距離はルイナの間合いだ。


 全身にルイナから発せられた殺気を感じる。その目は間違いなく本気だ。


 振り上げられた短剣が俺の首元に向かって振り下ろされる。


 無駄のない動きを。躱せない。


 逃げるそぶりすら出来ることなく短剣が俺の首に触れそうになった瞬間ーー

 ルイナの動きが急に止まった。


 ルイナが意図的に動きを止めたわけではないことは、驚愕したその表情を見ればよくわかる。


 体が動かず困惑しているルイナの姿を見て自然と口角が上がる。

 動けない状態のルイナから一歩下がり距離をとると、手に握られている短剣をそっと抜き取った。

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