パーティ解散の危機
店から出た俺は気持ちを落ち着けるために軽く深呼吸をする。これまであのふざけた態度に我慢してきたのだ。ここで耐えなければ全部無駄になってしまう。全てはエマの夢を叶えるためなのだ。
周り全ての人が俺を見放した中でエマだけは変わらなかっただけではなく、みんなから無能だと言われた俺のことを頼ってくれたのだ。こんなところで無駄にするわけにはいかない。
彼女の夢の実現のために必要な実力を兼ね備えた人物を見つけ出してパーティーメンバーに誘えたのだ。ルイナもスフィリアも必要な人物なのだ。
「すーぅ、はぁー……」
パーティーメンバーたちの顔を思い浮かべる。まだ16歳とパーティーの中では一番年下であるルイナも最初の頃はあれほど顕著に俺を悪く言ってはいなかった。
しかし、俺が目立った功績を残していないどころか、パーティーの足を引っ張っていると認識し始めた頃から今のような攻撃的な口調になった。正直な話、ルイナの気持ちはわからなくはない。
生意気だが実際に実力はあるし上を目指していきたいという向上心も持っている。彼には彼なりの思いがあるのだろう。銀狼族の特性なのかは知らないが強くなることに執着しているように感じる。そんな中で俺みたいな奴がパーティーメンバーにいたらムカつくだろ。
ルイナにはルイナの考えがあるように俺にも譲れないものもある。
同じくパーティーメンバーのスフィリアは【神官】という職を与えられておりわざわざ冒険者とならなくてもいいにも関わらず俺たちと一緒に冒険者をしている。実力も申し分ないし、回復役があるというだけでもパーティーとしての安定感が違う。
回復魔法を使うことができる人など限られているからこそ彼女はパーティーにいなくてはならない存在だ。
ルイナのように目立った反発は今の所していないが、おそらく俺に対して不満を持っていることだろう。
エマのこともそうだが、2人のことを考えるとこれ以上時間をかけていられないかもしれない。少なくともルイナは早めにどうにかしなくてはいけない。
頭を振って思考をリセットさせる。先ほどルイナに対して抱いた感情を発散させる。
「よし……」
冷静になった俺は店内に戻る。すると、ルイナの大きな声が聞こえてくる。どうやらエマに対して意見をぶつけているようだ。
「エマ! ボクはもう我慢の限界だよ! なんであんな奴をパーティーメンバーにしておくんだよ!」
「落ち着いてルイナ」
「ボクは落ち着いているよ。どう考えてもあいつはうちのメンバーにはふさわしくない! あんな弱い奴が仲間だなんて不愉快だよ」
酔っ払っているからかルイナの勢いは止まらない。
「あんな奴いなくたってボクたちなら問題ない! スフィリアだってそう思うよね?」
静かにお酒を飲んでいたスフィリアが一口飲んでから答える。
「そうですね……少なくとも今のままではいなくてもいいかもしれませんね」
「ほら! スフィリアだってこう言っている! どうしてそこまであいつを庇うんだよ!」
「リアムは……」
「リアム、リアムって……幼馴染みか何か知らないけどさ、ボクは上を目指せるからこのパーティーに入ったんだ。ごっこ遊びのためじゃない! このままならボクにも考えがある」
「……考えって?」
「そうだね……このパーティーを抜けるとか」
「それはっ」
ルイナの言葉を聞いて俺はメンバーの元へと近づく。先ほどまで馬鹿騒ぎしていた他の冒険者たちはいつのまにか静かになっている。流石に囃し立てるような真似をしている人はいない。
ルイナの言葉を聞いて黙っているわけにもいかない。
もう時間はなかったようだ。これ以上はダメだ。ただ、いい機会かもしれない
俺は2人の会話に割って入るために歩みを進めた。




