628 戦場へと連行
連行
「斉藤さん、斉藤さんや」
「なんでござるか?」
「そろそろ何処に連れてくのか説明してくれない?」
現在、俺は新幹線に乗っている。隣には不機嫌そうな雅人と何やら張り切ってる斉藤がいるのだが・・・俺としても状況が飲み込めてない。
今朝、いきなり訪ねてきた斉藤が、遥香と何やら交渉してほとんど着の身着のまま新幹線へと乗せられたのだ。雅人も同様のようで、朝だからというだけでなく、無理やり連れ出されたので不機嫌なのだろう。
「イベントでござるよ」
「今年は参加しないって言ったよね?」
去年のことを思い出しつつそう言うと斉藤は首を横に振って言った。
「違うでござるよ。声優のライブでござる」
「ライブ?」
「拙者の推しの声優さんのライブなんでござるが・・・実は行く予定だった別の友人が来れなくなってしまったのでござる」
「ライブってそこそこお金かかるんじゃないの?」
「そこは心配しなくていいでござる。新幹線代からライブのチケット代まで拙者の奢りでござるよ」
渡されたチケットには8000円の文字と、『紗倉心愛』という声優さんらしき人の名前が書かれていたが・・・はて、紗倉心愛?どこかで聞いたような・・・声優さんとかあんまり詳しくないのに、何故かこの名前を見たことある気が・・・うーん・・・
「いや、ていうか、流石にこれを奢りはキツくない?」
名前の方も気になったが、それよりも新幹線代とチケット含めるとかなりの金額になる。それを一方的に奢られるのはいくらいきなりでも気が引けてしまう。
「気にしなくていいでござるよ。拙者、転売は二度としないと決めてるので、無駄になるくらいなら友人を誘う方がいいでござるよ。新幹線代も拙者の我儘に付き合って貰うお詫びでござるからな」
「・・・なら、せめて向こうでのお昼とかは奢らせて」
本当はチケット代か新幹線代のどっちかは払いたいけど、この友人は絶対受け取ってくれないだろうからそう提案しておく。
「それは嬉しいでござるが、物販も並ぶのでお昼は軽くになりそうでござるな」
「・・・俺達も並ぶの?」
「2人にもライブの過酷さを体験して貰いたいでござるよ」
優しいのか優しくないのか分からなくなる。そういえば、前に斉藤が両親が離婚したと言った時に、それぞれの両親との浮気相手から、慰謝料という訳ではないが、迷惑をかけた斉藤に結構なお金を渡されたと言ってたような気もするけど・・・なんでも、父親の浮気相手は、社長令嬢で、母親は大手企業の社長とからしい。
それでお金はあるから大丈夫ってことかな?雅人を見ると無言で頷いていたので、ここは付き合う方が良さそうだと納得することにする。




