625.5 関係良好
「水瀬はこっちで良かったのか?」
健斗達がヨーヨー釣りに向かうのを見てから、そう尋ねる遥香。てっきり子供の世話に回ると思っていたので、そう聞くと水瀬は微笑んで言った。
「今日は巽くんから、先生のこと頼まれてますからね。それに、保護者さんも他に居ますから、安心して先生とお祭りを楽しめます」
あまりにも裏表のない笑顔に遥香は思わずくすりと微笑んでしまう。その雰囲気は自分の大好きな健斗とそっくりだと感じたからだろう。
「でも、一番先生と一緒に居たいのは巽くんでしょうね」
「まあ、だろうな。親子と夫婦ってのは中々難しいものっすね」
「他人事みたいだが、お前らもそのうちなるんだぞ?」
その言葉に少し照れる水瀬に対して、雅人は少し複雑そうな表情を浮かべて言った。
「もちろん、分かってますし、楽しみでもあるんですが・・・こういう時に、俺は多分子供より嫁を優先してしまいそうなんで、アイツが凄いと感じるんでしょうね」
「健斗だって、別に何も考えてない訳じゃないぞ?むしろ、嫉妬深い私のことを考慮して、この後目一杯愛してくれるんだろうな」
その言葉は確信にも近かった。健斗という自身の夫は、娘と嫁とそれぞれにちゃんと愛情を伝えてくれるので、遥香としてはこの後きっと夜はずっと甘やかしてくれるだろうと期待していた。時には健斗を甘やかす遥香だが、普段は甘やかして貰うのが何よりも好きで、健斗もその方が好きということで、需要と供給がきっちりと成り立っているのだ。
「・・・夫婦仲は円満みたいで何よりです」
「そっちもかなりラブラブなんだろ?そういえば、隣に引っ越してきて同棲するなんて話もあったな」
「そっちも準備してます。亜矢も納得してくれてますから」
「う、うん・・・」
嬉し恥ずかしそうにはにかむ水瀬は、同性の遥香からしても可愛かった。それが異性であり、恋人である雅人からしたら、どう写るかは言わずとも分かるだろう。思わず視線を反らす雅人に首を傾げてから、水瀬は遥香に言った。
「お母さんは大賛成なんですけど、お父さんが少し渋ってて・・・でも、雅人くんと一緒に住めて、お隣に巽くんと先生と千鶴ちゃんが居るときっと楽しいだろうなって思ってます」
「・・・そうだな。引っ越してきたら引越し祝いするか」
「はい!」
嬉しそうに微笑む水瀬。そんな水瀬の健斗に近い雰囲気が好きで、遥香としても元教え子より、友人に近いのだと思えるのかもしれない。なお、そんな会話の外で雅人が未だに水瀬の笑顔にやられて火照った顔を冷ましてる姿は少しだけ、面白く思えてしまったのだが、本人には言わないだろう。




