622 親友と浴衣
水瀬さん
「すみません、お待たせしました」
後輩と話していると、少し遅れて雅人と水瀬さんがやってきた。水色の浴衣の水瀬さんと、私服の雅人。水瀬さんにペースに合わせてゆっくりと歩く雅人の視線は、隠せないくらい水瀬さんに向かっていたのだが、気持ちは分かるので特に言わないでおく。
「水瀬さん、浴衣似合うね」
「そ、そうかな?ありがとう」
「だな、似合ってるぞ」
「先生と千鶴ちゃんも素敵です。それで、その子がレナちゃんですか?」
楽しげに話しつつも、レナちゃんとも自己紹介する水瀬さん。そんな水瀬さんをジーッと見つめる視線が2つ。1つは言わずもかな雅人で、もう1つはもちろん後輩だった。
「・・・アリですね」
何がアリなのか聞かない方がいいだろう。
「雅人は私服なんだね」
「まあ、男が浴衣着てもな」
「水瀬さんには需要ありそうだけどね」
「お前の場合は、浴衣着ないと嫁さんと娘がガッカリするだろうからな」
「まあね」
それにしても、高校卒業してそんなに経ってない気がするのに、親友のイケメン度が日に日に上がってるのが凄いと思う。水瀬さんという初恋で更に化けたのだろうけど、見た目だけでなく中身のイケメン度も上がったら、ますますモテて大変そうだ・・・主に水瀬さんが。
「んで、確かそこに居るは百瀬だったか?」
「はい、中条先輩ですよね?お噂はかねがね」
「俺も親友から、なんとなくは聞いてるよ。結婚式にも居たが・・・なるほど、親友の娘の友達の姉だったのか」
なんだろ・・・2人の間に物凄く分厚い壁があるように見えてしまう。まあ、片やモテまくりで異性への警戒が強い男と、もう片方は同性での愛を重んずる百合少女なのだから仕方ないのかもしれない。
「あの方は水瀬先輩でしたよね?中条先輩の彼女の」
「まあ、そうだが」
「可愛らしい彼女さんですね」
「自慢の彼女だからな」
んー・・・あんまりこっちは相性は良くないのかもしれない。まあ、百瀬さんはレナちゃんの方に付きっきりになるだろうし、雅人は水瀬さんの側にいるから、今回は大丈夫そうかな?
それにしても、水瀬さんは子供と仲良くなるのが早くて凄いと思う。俺もそこそこ子供受けはいい方だと思うけど、水瀬さんの場合、女性というのもあって、俺より仲良くなるのが早いかもしれない。まあ、千鶴に関しては俺は負けるつもりはないけどね。
親子の絆だからね。この1年と少しで芽生えたものはそう易々と越えられないだろう。なんて、少し大人気ないことも思いつつ全員で会場に向かうのだった。




