609 祖父の甘さが増してる件について
巽家へ
黒羽家への挨拶も終わり、俺たちは巽家へと向かった。実の所結構財力のある我が祖父だが、普段は節制を心掛けているので、あまり心配はしていないのだが・・・
「おう、健斗。ちーちゃんもよく来たの」
・・・そう言いながらさり気なくお小遣いを渡す姿には正直悩んでしまいそうになる。可愛いのは分かるけど、だからって俺にまで渡そうとするのはどうなのだろう?年齢的にそろそろ可愛い孫というラインは過ぎてそうだが・・・未だに昔のように可愛がってくれるのは少し複雑だ。
いや、嬉しくない訳じゃないけど、娘の前でお小遣い渡そうとするのは止めて欲しいものだ。
「お久しぶりです。お祖父様」
「遥香さんも息災そうで何よりじゃ。新しい曾孫はもうすぐだったかの?」
「ええ、今年中だと思います」
「うむ、生まれたらすぐ駆けつけるとしよう」
曾孫というのも、やはり可愛いものなのだろう。きっとこの祖父はガチで生まれたらすっ飛んでくるのだろうと納得してしまう。
「他の親戚共も会わせろとうるさいだろうが、そこはワシがなんとかするから気にしなくていいぞ」
「そう?」
正直、巽家の集まりは面倒なこともあるので、あまり親戚連中とは会う気にならないんだよなぁ。昔は集まりを手伝ってたこともあったけど、今は祖父がなんとかしてるそうだし、たまに海斗が手伝ってるくらいか?遥香や千鶴を連れてくるのだって、タイミングをズラしてるからね。
「奴らに渡す遺産は微塵もないからの。孫夫婦と曾孫のために残りの金は使うつもりじゃ」
「それは嬉しいけど、もう少し自分のために使ってもいいんだよ?無理に俺達に使わなくても・・・」
「健斗・・・うう・・・立派になったの・・・」
どうしよう、言っちゃなんだけどちょろ過ぎる気が・・・オレオレ詐欺とかに引っかからないか凄く心配だ。父さんを名乗った場合は多分スルーするのだろうけど、孫の俺達だったら騙されそうで怖い。
「お祖父ちゃん、俺の名前を語ってお金貸してって電話きたら気をつけてね」
「む?それなら何度か来たぞ」
あ、手遅れだったかな?
「ワシの孫はこんなに不細工な声はしてないと一喝してやったわ!それに、ワシの孫ならそんな事で電話するわけないからの」
不細工な声・・・オレオレ詐欺の人困惑しただろうなぁ。風邪ひいてるとか言っても騙されないのなら、多分大丈夫だろう。そういえば、この人普段は孫や曾孫に甘々だから、ある程度本質を理解してんだよね。だから、簡単には騙されないか。思わず納得してしまうのだった。




