607 花火
花火
「じゃあ、つけるよー」
チャッカマンで手持ち花火に火をつける。あまり花火には詳しくないが、千鶴が最初に持ったのはすすきと呼ばれるタイプの花火だ。鮮やかな色で噴出するような感じのあれです。
「わぁ・・・きれい!」
「危ないから振り回したりはしないようにね」
「うん!」
聞き分けのいい娘にホッコリする。近くでは、瑠美さんが・・・ヘビ花火と言うのかな?火をつけるとにょきにょき伸びてくるあれを見て笑っていた。そんなにツボる要素あったかな?
「それにしても、パラシュートなんて初めて見ましたよ。本当に売ってたんですね」
「そうなの?まあ、最近の子は知らないかもねぇ」
火をつけると筒から飛び出して、一番先に掴んだら勝ち?みたいな遊びがあるとかないとか。その様子からパラシュートと呼ばれてる花火なのだが、実物は初めて見たのだ。
「私はヘビ玉が好きだから、あんまり興味無いけどねー」
「そのにょきにょきしたのヘビ玉っていうんですね」
「らしいね〜。姉さんは普通の花火の方が好きらしいけど、私はこういう地味なのも好きなんだ」
にょきにょきしてるのを見て楽しげに笑う瑠美さん。
「あの、瑠美さん」
「ん?なあに?」
「いつもありがとうございます」
「唐突だねぇ」
千鶴が楽しげに花火をしてるのを眺めつつ俺は言った。
「いつも、俺たちのこと助けて貰ってますから」
「私はただ、可愛い姪と弟みたいな義兄と楽しんでるだけだよー」
「それでもです、本当にありがとうございます。またもう少ししたらご迷惑かけるかもしれませんが・・・」
「子供生まれるから忙しくなるねぇ。ちーちゃんも小学校入学するとなると、健斗くんも少しキツイかもしれないね」
「嬉しいのでそのくらいはいいんですがね」
別に俺が苦労するのは構わないのだ。いや、家事や育児を苦労だなんて俺は思わないけど。可愛い我が子と愛する嫁のためなら何でもするつもりだ。とはいえ、どうしても1人では難しい場面もあるだろう。そういう時に手助けを頼める人達がいるのが何より心強かった。
「変わってるね〜。でも、そういう人だから姉さんもちーちゃんも好きなんだろうね」
「だと嬉しいですが」
「そうそう。だからそんな身内のためにお姉さんも頑張るからねー」
「ええ、ありがとうございます」
甘えてばかりいられないだろうが、本当に困った時とかは頼りたいものだ。そういえば、遥香と出会ってから、こういうこと素直に言えるようになったのかもしれない。そんなことも思うのだった。




