606.5 水瀬さんとの夏休み
「ふぅ・・・」
「雅人くん、お茶どうぞ」
「ん?ああ、ありがとう亜矢」
健斗達が黒羽家でお盆を過ごしてる頃、雅人と水瀬は健斗達の家に泊まっていた。雅人からの提案だったのだが、水瀬本人も嬉しそうに受け入れたので期間限定の同棲みたいなものだ。
「でも、本当に借りちゃっていいのかな?」
「むしろ、健斗辺りはその辺も考えて貸したんだろうな」
留守番するのだから、折角なら同棲の練習もいいのではないか?そんな隠れた親友のメッセージを受け取ったのだ。
「それにしても、本当に巽くんって掃除も凄いね。どこもかしこも綺麗すぎる」
ピカピカに磨かれたシンクを見ると、使っていいのか悩んでしまった程だ。
「アイツ昔からそういうスペック高いからな」
「お料理の教え方も凄く丁寧だしね」
「そうなのか?」
「雅人くんは教わったことないの?」
「あんまり興味なくてな」
そう言いながら、雅人は水瀬のエプロン姿に少しドキドキしていた。家庭的な彼女は普段より更に可愛く見えたのだ。
「えへへ」
「どうかしたのか?」
内心を気づかれたのかと一瞬思ったが、水瀬本人はそうではなく、少しだけ恥ずかしそうに微笑んで言った。
「ご、ごめんね。なんか、こうやって雅人くんにお茶を出してると、雅人くんのお嫁さんになったみたいでその・・・嬉しくて」
その照れた笑みが可愛すぎて、雅人は思わず水瀬を抱きしめていた。
「ふぇ!?ま、雅人くん・・・?」
「・・・すまん。ついな」
可愛すぎてとは言えなかった。こういう所は親友を見習いたいと思いながら雅人は精一杯の言葉をかけた。
「その、な・・・亜矢といると、楽しくて、幸せすぎてな」
「そ、そんな・・・私の方こそ、雅人くんと一緒なのが凄く幸せなの。だから・・・ありがとう」
「・・・ああ」
そっと、キスを交わす。そんな些細な行為でも恥ずかしいのか赤くなる水瀬を見て雅人はさらにときめいてしまう。
(はぁ・・・これが本気ってやつか・・・)
余りにも、気持ちが溢れてしまっていて仕方なかった。それくらい今の彼女は可愛く見えたし、それくらい雅人は水瀬のことが好きなのだろう。
「・・・亜矢」
「・・・はい。雅人くん」
「好きだぞ」
それは、雅人なりの精一杯の言葉だった。それでもその一言が水瀬は嬉しくて思わず瞳を潤ませてから微笑んで答えた。
「・・・はい」
思わず、笑みを交わして、額をコツンと合わせる2人は、どこからどう見ても幸せなカップルにしか見えず、きっとそこが自分達の家なら確実に朝までコースだろうと予想出来るほどだった。




