604 川と果物
お祖母様
「あ、おさかなさんだ!」
嬉しそうに川を覗き込む千鶴。時間もあったので、近くの川に遊びに来たのだ。そこまで距離も遠くないので、遥香も日傘ありで参加している。遥香は日傘をするのを渋っていたが、今日は暑いので我慢して貰うことになった。
日傘と遥香の組み合わせはベストマッチで、我が愛妻がどこかの令嬢にも見えるけど、あんまり褒めすぎると恥ずかしがるので今は自重してる。
「今夜は魚料理もいいかもな」
千鶴に聞こえないように呟くあたり、優しさを感じる。とりあえず、後でお義母さんと相談しないとかな。
「綺麗な水だね」
「のめるの?」
「うーん、それはやめた方がいいかもね」
確か近くに湧き水もあるそうだけど、そこまでは難しいだろう。無理に飲む必要もないしね。
「えいっ!」
そんなことを思っていると、千鶴が泳いでいる魚を捕まえようとして失敗していた。小魚は動きが素早いから仕方ない。
「ん?あれ?祖母じゃないか?」
そんなことをしていると、遥香がふとそんなことを言った。そちらを向くと、何故か畑にいたはずのお祖母様がそこにはいた。
何かを川から取り出してる?
「お祖母様」
俺が声をかけると、向こうはこちらを一瞬見てからまた視線を戻して言った。
「この辺の水は飲めなくないけど、子供と妊婦はやめた方がいいよ」
「わざわざありがとうございます」
「・・・ふん。スイカ置いとくから食べな」
そう言い残して去っていくお祖母様。残されたのは川で冷やされたスイカと、用意してくれていた包丁とまな板だけだった。もしかして、わざわざ冷やしておいてくれたのかな?
「後でお礼をしないとですね」
「美味そうだが、塩がないのがな・・・」
「あ、俺持ってますよ」
「何で持ってるんだよ」
ポケットから塩の小瓶を出すとそんなことを言われる。最近はバックやポケットに色々と準備する癖がついていたのと、何故か必要な気がして準備していたのだ。
「とりあえず、お祖母様の好意を無駄にしないように食べるとしますか。切り分けますね」
「ああ、頼む」
そうして楽しみにしている千鶴のためにも、3人で分けて食べるが、ここのスイカは甘くて美味しかった。これもお祖母様が作ったのかと思うと、本当に凄い人だと思う。俺も老後は孫、曾孫の世話が一段落ついたら、遥香との日々の傍らで家庭菜園もいいかもしれないと少し思った。
今から老後の心配をしてもかもだけど、その前に生まれてくる子供のためにも色々と頑張らないとね。




