596 家族円満
ただの惚気?
「なんか、お前も運転慣れてきたな」
助手席でそんなことをしみじみと呟く遥香。千鶴の誕生日もお祝いしたので、本日は黒羽家に里帰りに向っていた。
「まあ、最近は運転する機会も増えましたからね」
「運転はする方が楽しいと思ってたが、お前とのドライブはまた違った良さがあるな」
「そうですか?」
「好きな男が益々カッコよく見える」
こういうことをサラッと言えるのが、遥香の卑怯なところだろう。
「ちーちゃんも運転するパパはカッコイイだろ?」
「・・・?ぱぱはいつもかっこいいよ?」
キョトンとしながら母親と同じように俺の心を鷲掴みにする娘。この母娘は俺をこれ以上メロメロにしてどうしようというのだろうか?なんか、マジで嫁と娘が可愛すぎて辛い。
「でも、前から思ってたが運転上手いな。相変わらず変なところで器用な奴だ」
「これも愛の力ですよ」
「ん?」
「だって、愛する人と大切な娘を事故なんかで失いたくないですからね。そりゃあ頑張りますよ」
俺の運転で2人を失うなんて耐えられない。それに、俺が似たような境遇の親子の命を不注意なんかで奪うのも我慢できない。2人のこと以外はついででも、1人の男して、親として、そんな下らないことで大切な人を失わせたくないし、失いたくないのだ。
「・・・お前は、相変わらず的確に私の心を掴むのな」
「お互い様です。俺だって遥香には毎日惚れ直してますから」
「それなら私は出会ってから、何千何万とお前に惚れ直しているな」
「一日で何回も惚れ直してますね」
「・・・お前がカッコよくて、優しいのがいけないんだ」
「遥香も可愛くて美人さんなのがいけないですね」
思うに、バカップルだよね。客観的に見れば。そんな日常に慣れてる千鶴のスルースキルを見習いたいものだ。マイペースなところがあるから、天然もあるだろうけど、親のイチャイチャを前にして空気を読んでいるのか気にせず本を読んでるのだから、ウチの娘は凄いと思う。
まあ、もちろん千鶴のことも放置はしないが。
「千鶴、次のサービスエリアでアイスでも食べる?」
「たべる!」
「遥香はどうします?」
「そうだな、今日は暑いし食べるとするか」
夫婦円満、親子仲良好、新婚生活にしては上手くいってる方だろう。学生時代から同棲して互いの相性も確認済み、そして俺は2人にベタ惚れしている。うん、客観的に見れば俺以上に今幸せな人もそう居ないと思う。まあ、失わないように努力はしてるけど、大切で大好きって気持ちはきっと何があっても変わらないから。




