586 歩み寄りの感覚
歩み寄り
「お、本当に彼女連れで来たのか」
お昼を食べて、3人で話してると、帰ってきた遥香がそんなことを呟いた。お昼は千鶴と水瀬さんと3人で済ませて来たのだろう。
「おかえり」
「ぱぱ!ただいま!」
「ただいま。それで、その子がそうか?」
「初めまして、お義姉様。海斗くんの彼女の姫路愛香です」
「なんか、呼び方があれだが、よろしく」
流石肉食系、グイグイ攻める。
「千鶴ちゃんですね。愛香叔母さんと呼んでください」
「あいかおばさん?」
そして、千鶴にもその手を伸ばしていた。しれっと叔母としての地位も確立するのだから凄い。水瀬さんの控えめな性格と割れば丁度普通になりそうなくらいだ。
「お義姉様、あの、お腹を触っても宜しいですか?」
「構わないよ」
そう許可を得てそっと大きくなってきたお腹を撫でる愛香さん。
「ここに愛の結晶が・・・私も頑張らないと」
「真顔でとんでもない事言うな。まあ、嫌いじゃないが・・・」
そんな光景の真横で、不器用に歩み寄る2人が。
「・・・えっと、こんにちは」
「・・・こんにちは。えっと、千鶴ちゃんだったね」
「・・・はい。あの、ぱぱのおとうとさんだよね?」
「・・・叔父さんでいいよ」
「わかった・・・えっと、かいとおじさん」
海斗とは何回か会ってるからか、少し話せる千鶴と、千鶴とどう接していいか分からなくて不器用な会話になる海斗。ある意味微笑ましいが、俺も叔父さんと呼ばれてみたいものだ。そのためには海斗には頑張って貰わないと。
「健斗、2人は泊まるのか?」
「いえ、帰るそうですよ」
「そうか、まあ、どのみち愛香はお前に料理習いに来るんだろ?」
「あれ?本人から聞いたんですか?」
不思議に思っていると、本人は首を横に振っていた。じゃあ何故?
「いや、お前の周りの奴の場合、嫁入り修行はお前がやるのが自然だからな」
信用なのか、以心伝心なのか分からないが少し複雑だ。まあ、水瀬さんという前例があるし、他にも料理を教えることもあるから、薫ちゃんとかもにもそのうち有り得そうだな。なんとなく、薫ちゃんの結婚というのは兄的立場からすれば複雑な気もするけど、そこは本人の幸せを願おう。
そんな感じでいつも通り話す俺たちをどことなく愛香さんは羨ましそうに見ていた。俺としては恋人関係もいいとは思うが・・・夫婦というのは、やっぱり憧れるものなのかもしれない。
俺の場合そこはゴールじゃなくて、現在進行形で続いてる日常だが、遥香と結婚出来たことは幸せなので気持ちは分かる。




