581 お返しは結構
お返し
「巽くん」
サービスエリアで、飲み物だけ買おうと思い自販機の前で商品を選んでいると、水瀬さんに声をかけられる。さっきは寝てたような気がしたけど・・・
「おはよう、水瀬さん。どうかしたの?」
「えっとね・・・昨日のお礼をまだ言ってないと思ったから・・・」
「お礼?」
それで思いつくのは俺が少し背中を押したお節介の件だろうか?名前呼びの簡単なきっかけだけだけど。
「別にいいよ。友人として出来ることをしただけだし、頑張ったのは水瀬さんだからね」
「それでも、言いたくて・・・ありがとう」
「どういたしまして」
俺としては大したことはしてないが・・・まあ、日頃の恩返しが出来たということにしておこう。
「あの、それで巽くん。良かったら今度3人でドライブしない?私、運転結構得意なんだよ」
次いで出た、その言葉に間違えて温かいコーヒーのボタンを押してしまった。この暑さで飲むのは辛いが、それよりも何故そんな誘いがきたのやら。
「いや、気を使わなくていいよ。雅人と2人の方が楽しいでしょ?」
「雅人くん、私が運転すると無口になるんだよね。それに、雅人くんが巽くんはドライブが好きだって言ってたから」
あの野郎・・・俺を道連れにするつもりか。
「本当は先生も誘いたかったけど、妊娠中だからまたの機会がいいかもって雅人くんが」
ナチュラルに雅人くん呼びは微笑ましいし、遥香と千鶴を巻き込まなかった点は褒めるが、俺を巻き込んだ件は許せない。というか、さっきの車での『水瀬さんスピード族説』を聞いた後でこんな誘いはわざととしか思えないな。
「そっか、機会があったらね。これから出産準備とかもあるし、千鶴も来年から小学生だからさ」
「うん、楽しみにしてるね」
そう言って離れていく水瀬さんだが、余計なことに巻き込んだ親友には後で説教をしないとな。後、暑くなってきてるのに間違えてホットのコーヒー買っちゃったけどどうしよう・・・冷まして飲むしかないか。
隣のお汁粉じゃないだけ、マシなのだろうが、夏近くでお汁粉ってどうなの?冷たいじゃなくて温かいだし。自販機の取り出し口からホットのコーヒーを取り出してため息をつく。
そういえば、あんまり意識して無かったけど・・・そうか、千鶴も来年から小学生なんだよねぇ。新しい家族が生まれるのといい、やっぱり重なるものなんだね。千鶴の学校行事に出来るだけ参加して、子育てと普通の家事も並行して行う・・・楽しみすぎて今から密かにワクワクしてる自分がいるが、遥香と千鶴のことももちろんちゃんと見るつもりだ。




