580 帰りの車
男同士
翌日は、朝食を食べてから片付けをして早々にコテージを後にしていた。俺的には家族とのまったりとした時間が過ごせて楽しかったが、1番成果があったのはきっと雅人と水瀬さんだろう。
この旅行で更に距離が縮まったのは確かだし。
朝からバタバタしてたせいか、後ろは静まりかえっていた。千鶴と水瀬さんがすやすやと寝ており、遥香も少しウトウトしてるように見えた。
運転してる雅人もそれは分かっているようで、更にミントのガムを噛んで眠気を抑えているようだ。まあ、昨夜も頑張ってたみたいだし仕方ないか。
「代わろうか?」
「いや、もう少し大丈夫だ」
「そう?事故る前に言いなよ?遥香と千鶴の安全は確保したいしね」
「今度は峠とかでタイムアタックしてもいいかもな」
「やるなら1人でお願い。事故って2人を失うとの俺が家事を出来なくなるのは困るから」
最悪2人が無事ならそれでいいが、事故で怪我して動けなくなると迷惑かかるのでそういうのはあまりしたくはないのだ。
「水瀬さんとの楽しいドライブでもいいんじゃない?そういえば、水瀬さんは運転どうなの?」
「・・・いや、あいつの場合、ハンドル握るのは不味い」
「速いの好きな感じ?」
その問いに頷く雅人。あー・・・ハンドル握ると性格変わるのか。
「お前は平気なのにな」
「当たり前だよ。俺にとって車は2人との楽しいお出掛け用と、楽に移動するためのものだしね」
とはいえ、1人なら使うこともそう無いだろう。遥香と千鶴に必要な時は普通に使うけど、1人だと燃料代とか勿体なし使えないんだよね。
「それで?水瀬さんの運転はどうだった?」
「・・・何回か空を飛んでた気がした。タイヤから変な音がしたり、有り得ないコーナーを平然と回っていたな」
遠い目をする雅人。なんかこの話題になった途端一気に老け込んだような表情をするからびっくりだ。
「それは楽しいドライブだったことで」
「・・・あいつがな、控えめに笑顔で運転したいと言った時の俺の絶望お前に分かるか?」
普段は控えめな彼女からの囁かな願い、しかしそれは一歩間違えれば己にとって紐なしバンジージャンプをするような破滅フラグにも聞こえるだろう。
「ドンマイ」
だから、俺はそう言っておく。同じ男として大切な女の子からの願いを無視できないのは分かるからだ。まあ、俺の場合そういう地雷は本人が踏まないから無いけど、気持ちは分かるのでそうとしか言えなかった。
「今度、お前も付き合ってくれ」
「子育て一段落したらね」
流石に幼いうちに子供を残してそんな危険地帯には行けないので無難に返しておく。




