576 夕飯前のお節介
お節介
「どうかしたの?」
それは、買い物から帰ってきて、夕飯の支度をしてる時だった。この2日と変わらずに手伝ってくれていた水瀬さんが少し悩んでるように思えたので思わず聞いていた。
「ううん、なんでもないけど・・・」
「雅人のこと?」
図星だったのか少しだけ驚く水瀬さん。次いで隠しきれないと思ったのか割と正直に話してくれた。
「なんか、先生と巽くん見てたら、随分と距離があるような気がして・・・」
キッチンには2人しかおらず、遥香と千鶴と雅人は各々部屋で寛いでるようだ。なので、何の心配もいらないが、やっぱりというか、水瀬さんも雅人のことで色々考えてたみたいだ。
「まあ、そりゃ夫婦と恋人だと距離感というか、ポジションが違うからね」
気軽に恋愛出来る現代人にとって、恋人と夫婦では全くの別物だろう。付き合って結婚してすぐに離婚する人がいるように、そこにはやはり確固たる差があると思われる。まあ、俺は遥香としか付き合ったこと・・・というか、結婚を前提とした付き合いしかしてないから、よくは分からないけど、なんとなくなら分かる。
同棲しても、俺は遥香のことがもっと好きになったし、千鶴とも本当に親子になりたいと思えたが、表面上だけの付き合いしかしてないカップルはきっと、そこで内面を知って受け入れられないという人もいるのかもしれない。
だから、仕方ないことなのかもしれないが、水瀬さんも納得はしつつ、思うところはあるのだろう。まあ、確かに自分のことを棚上げすると雅人の場合、どこか距離の詰め方におどおどしてる気がするのは確かだ。
雅人なりの考えもあるだろうけど、彼女を不安にさせるのは良くないし、仕方ない。
「水瀬さん、今日の夕飯の前だけど・・・」
俺は親友の背中を押しといて、ついでに親友の彼女の背中を押すことにした。俺の提案に水瀬さんは少しだけ驚いていたけど、それでも勇気を出す気になったようで頷いていた。
にしても・・・同年代の夫婦を見ると、同じ年頃としては少し焦りもするのか。高校卒業してすぐに独身も卒業したから知らなかったけど、ラブラブカップルでも、思うところはあるのかもしれない。なんか急かしてるみたいで少し申し訳なくもなるが・・・雅人の場合、もう少し頑張ってもいい気がするんだよね。
今までの女性関係的に難しいし、本気で大切にしてるのは分かるけど・・・その遠慮が相手には少し寂しく感じる時もあるだろう。だから、余計なお節介として俺は今日水瀬さんに勇気を出して貰うことにしたのだ。




