575 男の買い物
買い物
「買い物に着いてくるなんて珍しいこともあるものだね」
隣を歩く雅人に俺はそう言った。買い物に出掛けようとしたら雅人も一緒に来たのだ。
「まあな、少し相談もあったし」
「相談ねぇ・・・」
なんの事か何となく分かるが俺から言うことではないか。向こうから切り出すのを待つと、雅人はポツリと言った。
「どのタイミングなら自然に呼べると思う?」
「呼び方の話?」
無言の肯定をする雅人。つまり、水瀬さんを下の名前で呼ぶにはどうすればいいのかということか。
「それは、雅人次第でしょ。どんなタイミングでも、雅人が決めたなら実行した方がいいし。まあ、お前としてはどのタイミングなら相手が嬉しいかとかそういう疑問もありそうだけど」
「まあな」
とはいえ、俺はあまり参考にはならないだろう。最初の頃から下の名前で呼んでいて、こないだの結婚式で呼び捨てになったばかりだし。俺は元々結婚式で呼び方を変えることは決めてたから、そこまでそういうことでは悩んだことないのだ。
「水瀬さん、多分待ってると思うけど?」
「・・・分かってる」
「なら、いいけど」
時に第三者の方が客観的に取られえられるからこそ、助言とは役に立つのだろう。俺は人生経験豊富ではないが、アドバイス程度なら出来る。まあ、それでも、やっぱり決めるのは本人だけどね。
「お前も子供の生まれたら大変だな」
「むしろ待ち遠しいよ。俺よりも遥香の方が大変だし」
2度目とはいえ、赤ちゃんを出産するのは本当に大変だろう。安産だといいけど・・・そこは、安産祈願のお守りを信じるしかない。男の俺に出来ることは本当に僅かだし、その僅かはやっぱり手を抜きたくないのだ。だから、万全の状態で望まないとね。
「今年中か?」
「予定日はね」
そこからズレる可能性も十分に高いからなんとも言えないけど。まあ、無事に生まれてくれればいつだって構わないさ。母子共に元気であればそれでいい。その間寂しい思いを千鶴にさせたくないものだ。
生まれてく赤ちゃんだけじゃなく、今いる千鶴もちゃんと見てあげたい。出産で大変なのは何も親だけじゃない。子供だって頑張っているのだ。それを忘れてはいけない。
そういう時こそ、きっと千鶴は無理をするだろう。だから、そのサインにも気づいてあげないとね。
「大変かもだが、水瀬のことも頼んだ」
「料理教えるくらいなら大して手間もないよ。その代わりちゃんと食べてあげなよ?」
「分かってる」
それならいいと俺たちはそのまま店に入るのだった。




