571 準備中に
お昼
お風呂からあがって、千鶴の髪を乾かしてから俺は昼食の準備に取り掛かる。水瀬さんも手伝ってくれるが、本当に雅人はいい彼女を見つけたとしみじみ思う。
「ドリアは自分で作ったことなかったなぁ」
「そうなの?」
「うん、巽くんは良く作るの?」
「千鶴の好物の1つだしね」
作業しながらそんな会話をする。実家の頃はそこまで作ることはなかったけど、千鶴がハンバーグドリアが好きなので遥香のところに通うようになってから相当作ってきたと思う。
「ハンバーグドリアなのは、千鶴ちゃんがハンバーグ好きとかなのかな?」
「そうそう。遥香も肉類好きだからそこはある意味似た親子なんだろうね」
「ふふ、確かに」
まあ、そんなところも可愛くて好きなんだけどね。
「あの・・・中条くんって」
「雅人は美味しければなんでも食べるけど、巡李さんが料理上手だから少し舌は肥えてるかも」
「うう・・・」
「でも、可愛い彼女の手作りなら喜んで食べると思うよ」
「そ、そうかな?」
本当に水瀬さん、雅人のこと好きなんだねぇ。ここまで想われるのも凄いけど、雅人もかなり惚れてるし親友としては少し安心したかな。
「でも、敢えて言うなら味噌汁と卵焼きは練習しておくといいよ。その2つが美味しければ自然と雅人の胃袋は掴めるはずだからね」
「うん、分かった」
「時間あれば俺も教えるからさ」
「ごめんね、色々忙しいのに」
「親友とその彼女のためだしそこまで手間じゃないから大丈夫だよ」
人に料理教えるのは慣れてるし、嫌いじゃないからね。千鶴ももう少ししたら料理教えようかなぁ。まあ、本人が望めばだけど。無理強いはしたくないし、嫌々だと怪我するかもしれないから慎重にね。
「巡李さんにもそのうち教わるといいよ。あの人は本当に料理上手だし」
「あの・・・聞いていいか分からないけど、巽くんってお父さんはもう居ないの?」
「ん?いや、結婚式で見なかった?」
「綺麗な女の人なら見たけど・・・」
「それが俺の父親ね」
「ええ!?」
あ、この感じ久しぶりだ。そういえば、父さんのこと話すの自体最近は無かったしね。まあ、父さんの見た目的に母親にしか見えないのは否定できないしね。
「女装する夜のお仕事してるんだよ」
「そうなんだ・・・」
「母親の方がもう居なくてね。俺と弟のために頑張ってくれたんだ」
「その・・・ごめんね」
「ああ、大丈夫。その辺も含めて救って貰えたから」
思えば、遥香のおかげでこんな風に話せるのかもしれない。そんな感じで調理の片手間に俺は久しぶりに他の人に父親について語ることになるのだった。何故?まあ、いいか。




