568.5 正妻の余裕
「本当に大きくなりましたよね」
遥香のお腹を見てそう呟く水瀬。少し前に見た時よりもずっと大きくなっているので何度見てもそんな感想を抱くのだ。
「まあな。今回は悪阻も大分楽だったし」
「やっぱり辛いんですか?」
「1人だとかなりな。今回は健斗がいたから」
ずっと側にいて、些細なことにも気づいてフォローする健斗。そんな健斗の存在と優しさにかなり助けられていたのは事実だ。
「巽くん本当に凄いですよね・・・料理も上手だし、師匠って呼びたくなります」
「いいんじゃないか?弟子は多そうだし。でも、確か中条の母親もかなり料理上手かったと思うが」
「いきなり頼むのは少しハードル高くて・・・巽くんには許可は貰ったのでとりあえず巽くんに教わってみます」
遥香としても、水瀬ならあまり嫉妬はせずに済んでいるから構わなかった。というか、どうしても水瀬と健斗がくっつく未来が見えなかったのだ。どちらも想い人のことを一途に愛してるのでその心配がないのだろう。これは、雅人との共通の認識だ。
「中条とは仲良くやってるみたいだな」
「えっと・・・はい・・・」
「少し不安か?」
「その・・・こんな、私のでいいのかなって何度か思ってしまうんです」
今でも雅人に言い寄る女性がチラホラ居るのだ。だからこそ、水瀬は少し不安にもなっていた。
「むしろ中条の場合、お前しか居ないと思うがな」
「でも、私、先生みたいに綺麗じゃないですし・・・」
「中条はお前の外見と内面と両方に惚れたんだろ?なら、大丈夫だ」
「そう・・・なんですか?」
「まあ、これは健斗情報だかな」
その言葉に嬉しくなって俯く水瀬。そんな水瀬を初々しく思っていながら麦茶を飲む遥香。飲み物にも色々と制約がついて面倒だが、これも健斗との可愛い子供のためだと思えばそこまで気にもならなかった。
「ん?少し降ってきたか」
「え・・・あ、本当ですね」
外を見ると小雨だが雨が降り始めていた。
「傘は・・・健斗なら持ってるかもな」
「中条くんは持ってないかもですね・・・」
「とはいえ、迎えに行くにも傘なんて持ってきてないしな」
「アウトドアというより、本当に旅館気分でしたからねぇ・・・」
どうしたものかと思う水瀬に遥香は気にせずに言った。
「まあ、のんびり待ってればいいさ」
「いいんですか?」
「ちーちゃんのことは健斗が絶対に守るからな。男2人は少し濡れてもそこまで風邪引くようなタイプでもないし」
むしろ、健斗が今までに体調を崩したことが1度もないので本気でそう思えるのが恐ろしいところだ。




