七夕、健斗の願い事
「あれ?雅人?」
商店街で買い物を済ませていると、何故か短冊のある場所で雅人がそれを眺めているという図があった。あまりこの手の行事に思い入れがある方ではないと思ったけど・・・
「ん?おお、健斗か。お前もこっち来いよ」
「何してるの?」
「短冊見てた。お前用のが沢山あるぞ」
マナー違反かもしれないが、そう言われて少し眺めてみると確かにそれっぽいのが何個かあった。というか・・・おい、後輩よ。女装に目覚めるとか物騒なこと書くなよ。薫ちゃんは・・・想い人と言うより、俺が離婚したら面白いくらいのことかな?そして、吉崎、彼女募集中って・・・ここで書いても誰もお前の姿分からないから声をかけられないぞ。
あ、でも神様への願い事だからセーフなのかな?
「ほら、ここにお前の嫁の分もあるぞ」
「そっちこそ、彼女さんがお前のこと想って書いてるぞ」
2人でそれぞれの想い人の書いた短冊を見て思わず苦笑する。なんとも、気恥しいが、嬉しかったのだ。
「俺達も書く?」
「ま、たまにはいいか」
短冊を手に取りさらさらと書く。こういうのって迷いそうなものだけど、今の俺は結構あっさりと書ける。ちなみに昔は『家内安全』か『世界平和(野菜の値段的に)』と書いてたのを思い出す。
雅人は確か・・・『もう少し大人しい女の子が居ますように』だったか?なんかイケメンの苦労が忍ばれるよね。
「書けたか?」
「まあね」
「んじゃ、飾るとするか」
そう言われて吊り下げる。と、雅人の短冊が目に入った。
『好きな奴の隣に居られますように』・・・なんとも、雅人らしくないけど、微笑ましい短冊だ。やっぱり水瀬さんこそ雅人にぴったりなのだろう。そう考えると親友を幸せにしてくれた彼女には感謝しないとね。
「雅人」
「なんだ?」
「良かったね」
「ふん・・・お前もらしくていいな」
俺の願い事は本当に些細なこと。『生まれてきた子供と千鶴と遥香と幸せでいられますように』、無事に生まれるように祈るのは初詣で安産のお守り買ったしきっと大丈夫だと信じてる。だから、その後、その子達が幸せであったらそれ以上に嬉しいことはない。
「野菜の値段とか気にしてたのに、自分の幸せを書けるようになったんだな」
「あれ?覚えてたの?」
「教師が苦笑してたくらいだからな。お互い変われば変わるものだ」
「だね」
その後、少し喫茶店に寄って雅人と話してから家に帰った。千鶴も保育園で願い事を書いたって言ってたし、皆の願いが叶うといいと思いつつその日は七夕っぽいメニューで頑張ってみたのだった。




