七夕、遥香の願い事
「あ、先生。あそこ見てください」
「ん?ああ、短冊か。そういえば、もうすぐ七夕だな」
七夕が近くなってきた頃のこと、水瀬と出掛けていた遥香は商店街のところで七夕の飾りと短冊を発見していた。この時期にはよく見かけていたが、健斗が来るまで心に余裕がなく気にしていられなかったというのが本音だが、今は普通に楽しむことが出来るようになっていた。
「せっかくだから、書いていきませんか?」
「別に構わないが・・・彼氏との方がいいんじゃないか?」
「な、中条くんには恥ずかしくて見せられないと思うので・・・」
赤くなりそう呟く水瀬。なんとなく、健斗が女ならこんな感じかもしれないと思いつつ2人で短冊を手に取りペンを借りて書く。
「水瀬、書けたか?」
「えっと・・・一応」
「んじゃ、飾りに行くか」
2人とも早々に書き終わり、早速短冊を吊るしに行く。と、ふと見かけた短冊に馴染みのある名前が書いてありマナー違反かもしれないが遥香はその短冊を見ていた。そこには『先輩が女装に目覚めますように』と書かれた短冊があり、名前は百瀬百合と書かれていた。間違いなく女装健斗に惚れた、千鶴の友人の姉である後輩だろう。
(あいつも大変だなぁ・・・)
遥香的に嫉妬してもおかしくないが、あの様子だとそこまで警戒しなくてもいいだろうとも思えていた。そして、近くにまたしても見慣れた名前が書かれていた。『好きな人が離婚しますように』なんとも危険な単語だが、近くに名前だけ・・・薫と書かれていたことで遥香は若干眉を顰める。
まあ、何度か話した感じ、無理やり離婚を迫ったりすることはないだろうし、これも本気ではないだろうと思って裏を見ると、そこには『好きな人が幸せでありますように』となんとも健気な内容であった。
(流石、中条の妹だな・・・)
少し運命が違っていたら健斗を取られていたかもしれないと冷や汗が出てくる。しかし、既に健斗は自分のものなので渡す気は絶対無いが。
「先生、どうかしましたか?」
「いや、知り合いのを見つけてな」
「へー、どれですか?」
流石にその2つを見せるのはなんだったので、もう1人、『彼女募集中!』と書かれた吉崎のを見せると水瀬は苦笑していた。
「ストレートですね」
「仕方ない。そういう奴だからな」
その後、短冊を飾ってから2人で買い物をして帰宅するが、短冊にはそれぞれ『中条くんとずっと一緒に居られますように』と書かれた水瀬と、『お腹の子と健斗、ちーちゃんと幸せに居られますように』と書かれた遥香の短冊がそれぞれあったとだけ付け加えておく。




