525.5 託すこと
「にしても・・・あの健斗がもうお父さんなんて、私も歳をとったものね」
健斗が千鶴を寝かしつけてると、そんなことを言う恵。距離的にも健斗には聞こえてないその言葉は目の前の話し相手である遥香に向けてのものだ。
「まだまだお若く見えますが」
「見た目だけよ。仕事柄ある程度見た目が良くないとね」
そうはいいつつ、ほとんど天然で女装してる恵に遥香はかなり驚いていた。
(これが血筋か・・・)
健斗は見た目は完全に母親似であり、女装してガチで可愛いというのはある意味父親の血筋なのかもしれないと納得する。
「でも、残念ね。遥香さんとお酒飲めるの楽しみにしてたんだけど・・・」
「妊娠中なので、それに飲むと多分健斗がガチで怒るので」
「そうね、あの子普段は物凄く大人しいけど、こういうことは本気で注意するから」
普段はそれこそ、甲斐甲斐しく色々としてくれる優しい夫なのだが、こういうこと・・・まあ、危険なことや、本当にヤバいことなどに関してはきちんと叱れるというのが事実であった。
「健斗が飲めるまであと二年・・・その前に子供が2人もいるなんて、なかなかないわね」
「案外三人目も早いかもですがね」
「お盛んねぇ、まあ、孫が増えるのは大歓迎よ」
とはいえ、遥香への負担を考えてもう少し先にしようと健斗はするかもしれない。遥香的には健斗の子供なので何人でも生みたいが・・・まあ、そこは迫るしかないだろう。
「遥香さん、健斗のこと大切にしてあげてね」
それは父親としての恵の偽らざる本音。健斗には遥香しかいないと思ってのセリフだ。それが分かったからこそ、遥香は頷いて言った。
「勿論です。一生離しません」
絶対に幸せにするという意志を込めてのその台詞にホッとしてから、恵は言った。
「まあ、今あの子が本当に幸せなのは分かってるから、もう疑ってはないんだけどね」
「随分と信頼されたようで」
「だって、あの子が前を見れるようなったのは間違いなくあなたのお陰なんだしね」
かつての健斗は母親から託された家族を守るために必死だった。そして、そのために自分の気持ちを隠してまで頑張っていた。それを救ったのは間違いなく遥香だ。だから、恵は遥香に可愛い息子を託すことに決めた。
「結婚式、楽しみにしてるわ」
「この年でやるとは思わなかったですが・・・はい」
「あら?健斗は物凄くやる気満々だったけどね」
「ええ、よく知ってます」
「夫婦だものね」
そんな感じで2人は和やかに会話をする。出産後、落ち着いてから少し飲む約束も軽くするのだった。




