521 祖母の贈り物
「そういえば・・・何か渡すってさっき言ってたような・・・」
しばらく色々話してると、そんな疑問をふと思い出す。どうせお土産だろうと思って聞くと、父さんは鞄から何かを取り出すとそれを俺に渡してきた。
「これなんだけど・・・結婚祝いよ」
「結婚祝い?」
このタイミングで?そんな疑問を抱いていると、父さんは少しだけ肩をすくめて言った。
「そう、お祖母ちゃんからのね」
その言葉に驚いてしまう。既に亡くなってる祖母からの結婚祝い・・・考えられるとすると、死ぬ前に用意していて父さんに渡していたのだろうか?細長い少し小さめなプレゼントを前に少しだけ迷ってから、開封する。と、中には小さめの手紙と扇子が入っていた。
高そうな黒いカッコイイ扇子を広げて閉じる。扇子なんて昔学生時代に安いのを学校で授業で使った程度だなぁ・・・なんて思いながら手紙の方を読む。
『健斗へ。結婚おめでとう。頑張り屋さんな健斗のことだから、私が死んでからも無理してるかもしれないけど・・・幸せになりなさい。お祖母ちゃんは天国から健斗のこと、見守ってるから』
「お祖母ちゃん・・・」
思えばお祖母ちゃんには色々心配ばかりかけていた気がする。母さんが亡くなってから、ずっと俺はお祖母ちゃんに色々と教えて貰っていたから。恩返しも出来ずに、曾孫の顔も見せられなかったのは今でも悔いてるくらいだ。
「それね、お祖母ちゃんがもしもの時にって、私に残していったものなの。あんまり長くないの分かってたのかもね」
「・・・そっか」
「あと・・・健斗のこと、本当に大切に思ってたのね。向こうでお祝いするって言ってたもの」
本当に俺は優しい人に恵まれてると思う。思えば、祖母にはいつも迷惑をかけていた。家事スキル全般を習ったり、海斗や父さんのことでも色々助けて貰った。
もっと、色々なこと話したかった。恩返しがしたかった。俺の嫁である遥香さんのこと紹介したかった。曾孫の千鶴ちゃんと遥香さんのお腹の中の桜のことも教えたかった。
ぐっと涙を堪える。
お祝いなんだ。涙は相応しくない。遥香さんと出会ってから、今まで無意識に我慢してた部分が出てきてしまっている。でも、それをここで出すことは出来ない。
「父さん」
「なあに?」
「ありがとう」
だから、そうとだけ言っておく。普段扇子なんて使うかは分からない。でも、これはお祖母ちゃんからの大切な結婚祝いだ。だからこそ、お祖母ちゃんには笑って報告しないと。
お祖母ちゃん・・・俺、幸せになるから。




