516 雨の日の出会い
雨の日
梅雨というのはやはり雨が降りやすいものだと感じる。雨が嫌いな訳じゃなくても、少しだけ気分が落ちることは仕方ないのかもしれない。
いや、昔は少し苦手だったんだよね。せっかく干した洗濯物のこともだけど、雨の日だとどうしても思い出してしまうことがあったから。
母さんの葬式もまさに雨だった。
今でも覚えてる。あの重い空気は。だから、少し苦手だったんだけど・・・
「なんで俺はこんな所に来たのかなぁ・・・」
結婚式が近い中、空いた時間にふらりと来たのはとある病院の前。その病院は母さんが昔入院してた病院なのだが・・・今更なんでこんなところに来たのか自分でも不思議だ。
少し補修されているが、それでも昔と代わらないその姿になんとなく懐かしくなる。思えばずっと通ってたよなぁ。
このすぐ近くにある小さなアパート・・・そこが俺が幼い頃に住んでいた家だ。まあ、母さんの葬式からしばらくして、父さんが復活してオカマの道に走りはじめてから前のところに引っ越したんだけどね。
そう考えると、俺は随分と豪華なところに引っ越したものだとしみじみ思う。
「あら・・・健斗くん?」
ふと、名前を呼ばれてそちらを向くと見覚えるのある女性がいた。若干迷いつつも、少し老けたとはいえ、すぐに分かった。その人はかつて母さんがいた頃に何度も挨拶したその病院の看護師さんだ。確か前に会った時は結婚して辞めてこの近くに住んでるって聞いてたけど・・・
「お久しぶりです」
「大きくなったわねー・・・元気にしてたかしら?」
「はい、お陰様で」
本当に久しぶりだと思うけど・・・前なら少し会うのは躊躇われた人でもある。母さんのことを思い出してブレてしまうかもしれなかったから。でも、俺は遥香さんと千鶴ちゃんに癒して貰った。だから、自然と大丈夫だと思えた。
「今何歳になったのかしら?」
「18歳です。高校卒業して、結婚しました」
「まあ!本当に?」
「はい。実はもうすぐ結婚式なんですが・・・なんとなく足が向いてここに」
「そう・・・なんだか大人っぽくなったものね」
皆そんなことを言うね。俺としてはそんなに変わった気はしないけど・・・まあ、父親と夫になったからだろう。
「時間あるなら、少し寄ってかない?お茶でも出すから」
「構いませんよ」
妙な縁ではあるが、この人にはお世話になったからね。ある程度ちゃんと報告するのも悪くないだろう。そんな感じで俺はその人に着いていってお茶をご馳走になるのだった。




