515.5 愛して欲しくて
「なんか巽くんには気を使わせちゃって申し訳ないです・・・」
健斗が出掛けてから2人きりになってそんなことを言う水瀬。そんな彼女に遥香は肩を竦めて言った。
「ま、そんなに気にしなくていいと思うぞ。ちーちゃん的にも父親との時間が楽しいらしいしな」
「父親・・・そうですよね、巽くんはもうそうなんですよね」
「元々の素質もあったからな。夫と父親。どっちも楽しいらしいからな」
遥香的にも最高の夫だと自慢したいくらいだ。そんな遥香の言葉を受けて水瀬は少しだけ迷ってから遥香に訊ねた。
「あの・・・普通の男女ってどのくらい・・・その、お互いを求めるものなんでしょうか?」
「エロい話か?」
その言葉に恥ずかしそうに頷く水瀬。遥香は深くは考えずに経験則を語る。
「個人差もあるだろうが・・・まあ、求められる時は求めるのも必要だろうな」
「ちなみに先生はその・・・そういうこと、結婚してから何回してますか?」
「私か?ほぼ毎日だな」
あまりの返答に絶句するが・・・早めに子供が欲しければ有り得ないことではないと納得する。
「アドバイスとしては、愛し合いたい時は素直に言うことだな。まあ、こればっかりは向こうもどうくるか次第だろうが、そのうち健斗がなんとかするだろ」
参考になるとは思わないが、遥香としてはこればかりはお互いにやってみないと分からないだろうと結論づける。
「それで?まだなんかありそうだけど」
「えっとですね・・・専業主婦が夢って笑われますかね?」
「目指してるのか?」
「大学卒業したら中条くんの元に行きたい・・・そんなことを考えるのはやっぱり卑怯でしょうか」
それは水瀬の子供の頃からの夢だ。お嫁さんになりたい・・・そんな夢を雅人と出会って再び抱いてしまったのだ。この人の側にいたい。この人の子供が産みたい。そんなことを願ってしまう自分に罪悪感を抱く水瀬。そんな水瀬に遥香は言った。
「もしそれが夢なら、生活さえ安定すれば叶えるといいと思うぞ?まあ、これはお前の恋人次第だが・・・一つだけ言えることがある」
「それは?」
「自分が心から望む夢ならそれは叶えるべきだということさ」
相手が許すかも大切だが、それが目標なら叶える努力は決して無駄ではないと断言出来る。そんな遥香の言葉に驚いていた水瀬はくすりと笑って言った。
「先生が男性だったら惚れてたかもしれません」
「生憎と旦那がいてな。嫉妬させたくないのさ」
「分かってますよ」
そんな感じで女同士の相談は定期的に行われるようになるが・・・これが更に2人の仲を深めたのは言うまでもないだろう。




