509 兆し
少し早いけど
「あれ?」
その日、俺は起きてから違和感に気づいた。なんだか遥香さんがいつもより調子が良さそうに見えたのだ。その感覚はその日ずっと続いて、翌日もその次も続いた。これってもしかして・・・
「遥香さん。もしかして・・・」
「ん?ああ、多分つわり落ち着いてきたんだと思う」
本人も気づいていたようだ。体調が落ち着くならいい事だけど、前ほどお世話出来ないのは少し残念だ。なんか悪阻は早く終わって欲しいけど、遥香さんのお世話はめちゃくちゃ楽しいからしたいって感じだ。
「良かったよ。これで仕事にも集中出来る」
「でも、無理は禁物ですよ?あと、分かってるとは思いますが妊娠中は一滴も飲ませませんからね」
「分かってるって。子供いて飲むほどアル中ではないしな」
「ならいいですけど」
うん、やっぱり遥香さんだなぁって感じだ。落ち着く。
「そういや、結局結婚式の時に渡すプレゼントは決まったのか?」
「ある程度は買ってきました。でも、何人か迷ってまして・・・」
「時間はあんまりないが、お前がいいと思うものを選べばいいさ」
「はい」
まあ、とはいえ、本当に迷ってるのは事実なんだよねぇ。渡そうにも渡していいか迷う人もいるし。
「そういや、ちーちゃんにも話してあるんだよな?結婚式の時のこと」
「はい、もちろん」
千鶴ちゃんにも結婚式の時に色々と手伝って貰う予定だ。可愛い娘を放置するような真似はする気はない。まあ、多分放置したら祖父母連中にめちゃくちゃ可愛がられるだけだろうけど・・・それはそれで大変だしね。
「早いよなぁ・・・もうすぐか」
「ええ、楽しみです。遥香さんのウェディングドレス姿」
「そうか?この年で着るとは思わなかったが・・・」
「絶対可愛いですよ。それに何歳でも俺には遥香さんが可愛く見えますから」
「・・・本当にお前は時々狡いよな」
首を傾げるけど、事実だしねぇ。遥香さんが例え何歳でも好きになったら関係ない。そう思う。
「ま、私のはともかくちーちゃんのドレスとお前のタキシードは楽しみだ」
「千鶴ちゃんは同意しますけど、俺は普通だと思いますよ?」
「はは、馬鹿だなぁ、それこそ私からすればどんなお前でもカッコイイんだよ」
「・・・女装でもですか?」
「それは可愛いだな」
嬉しくないけど、嬉しい・・・複雑だ。そんな感じでこの日から遥香さんは少しづつ体調が安定するのだった。本当に良かった・・・苦しそうで見てて辛かったし。やっぱりこうして元気な姿というのは本当に安心するものだ。




