506 自分のペースで
マイペース
千鶴ちゃんの様子がおかしいのは、迎えに来てからすぐに分かった。皆には分からないくらい極わずかな違和感。だから、俺は千鶴ちゃんとの帰り道で思い切って聞いてきて。
「千鶴ちゃん。何かあったの?」
そう聞くと千鶴ちゃんはビクッとしてから・・・ポツリと言った。
「あのね・・・おとこのこにすきっていわれたの・・・つきあってって・・・」
コケなかった俺を褒めて欲しい。何処のどいつがウチの可愛い娘に手を出そうとしたのか物凄く気になったけど、まだ言いたいことがありそうなので黙って頷くだけにする。
「でもね・・・ちー、そういうのよくわからなくて・・・ぱぱとままみたいになるじしんなくてね。だから・・・」
知らず知らずのうちに涙ぐむ千鶴ちゃんに俺は立ち止まってから思わず頭を撫でて言った。
「いいんだよ。千鶴ちゃんは千鶴ちゃんのペースで。それにパパとママみたいになることもない。千鶴ちゃんは千鶴ちゃんがなりたいものになればいい」
「・・・いいの?」
「もちろん。なんせ、パパも初恋はママだからね」
我ながら遅すぎる初恋だけど、それで幸せになれたのも事実だしね。
「ねぇ、千鶴ちゃんはその男の子のことカッコイイとか側にいたいとか思ったの?」
「・・・ぜんぜん」
ざまぁと思った俺はかなり性悪かもしれない。
「なら、千鶴ちゃんがそんな風に心から思える人に出会えるまでは断ってもいいんだよ。無理矢理付き合ってもそれはいつか限界がくる。偽物は本物になろうとしない限り偽物だからね」
それに・・・
「そうやって、千鶴ちゃんが必死になって考えてることが大切なんだよ。相手には申し訳ないかもしれないけど、千鶴ちゃんは千鶴ちゃんの思うようにすればいい。パパはいつだって千鶴ちゃんの味方だからね」
「ぱぱぁ・・・」
色々限界そうな娘を抱き上げる。初めての告白。やっぱり女の子にとってそれはかなり重いものなのだろう。特に優しいこの子は相手のことばかり考えてしまう。
確かに、告白することは凄いことでもある。でも、相手にとってそれが本当に嬉しいことなのかは別だ。男と女では考え方が違う。告られたいって人もいれば、そういうのが苦手な人だっている。
これから先、千鶴ちゃんはますます可愛くなるだろう。そうなれば今日みたいなことも多くなるだろうが・・・でも、いつか、自分からそれを言える日が来ることを切に願う。可愛い娘には幸せになって貰いたいからね。
それはそれとして・・・告った男の子にはお礼参りしたいところだけど・・・男の嫉妬って醜いものだねぇ。なんて思いながら千鶴ちゃんを愛でるのだった。




