497 一目惚れ
恋ではない(`-ω-´)✧
「ここかな?」
少し裏路地に入ってるような所に建てられてる施設、名前は『イルカ教室』。イルカのマスコットが愛らしい少し古めのその施設が正しく千鶴ちゃんの友達が通ってるところなのだが・・・なるほど、悪くないかな?
中に入って受付の人に軽く見学したいと言えば喜んで頷いてくれて、体験までさせてくれそうな勢いだったけど、室内を一望出来る外の場所で十分だと言ってなんとか落ち着かせた。
子供達の練習風景が見えるようにという配慮なのか、入ってすぐの所でプールを一望出来るようになってるのだった。ここに着くのに少し迷ったせいで、時間が遅めになってしまったからか、今はもう小学生のターンになっていたけど・・・にしても、皆泳ぐの早いね。
「ぱぱ、ぱぱ」
グイグイっと俺の服を引っ張る我が娘。その視線の先を見ると、1人だけ段違いの女の子がそこにはいた。25メートルのプールを圧倒的な速さのバタフライで駆け抜けていって、悠々と水中でターンしてまた戻るその姿は本当に飛んでるように思えるほどだった。
千鶴ちゃんが食い入るようにその姿を見つめていると、近くの人が微笑んで千鶴ちゃんに言った。
「速いでしょ?あれ、ウチの娘なの」
「うん、すごい・・・」
「本当に凄いですね。プロ目指してそうなくらい速いですね」
「あら、ありがとうございます。そんな話もありましたけど、趣味でいいからって辞退したんですよ」
多分、俺なんかよりずっと速い。テレビで観たことあるようなガチの泳ぎなのに趣味でいいって凄いなぁと思っていると、千鶴ちゃんが物凄く静かに興奮してるのが分かった。多分、今魅せられたのだろう。この子がこんな風に憧れを抱くとはびっくりしたけど、いい事ではあるので俺は微笑んで聞いた。
「じゃあ、水泳やることにする?」
「うん・・・!」
「分かった。受付してくるね」
手続きをして、色々と注意事項などを確認してから戻ると、椅子を使ってじっとさっきの速い女の子を見つめている千鶴ちゃん。なんだか楽しそうで良かったけど・・・これは、ピアノは無しの方向の可能性も高そうだなぁと苦笑するのだった。
「ぱぱ。ちーもあんなふうになれるかな」
「千鶴ちゃんが頑張ればきっとね」
「うん・・・がんばる」
本当にこの時の俺はこれがあの子と同じ年頃になればそうなってるだろうくらいに思っていたのだった。千鶴ちゃんの才能が遥香さん譲りだと分かってたはずなのだが・・・まあ、そんなことをつゆ知らず千鶴ちゃんが満足するまでその子の泳ぎをひたすら見るのだった。




