477 子供の我儘は
大人として
「千鶴ちゃん、どうかしたの?」
お泊まりが決まってウキウキしていた千鶴ちゃんだったが、少し前からちょっとだけ申し訳なさそうな表情を隠しているようなのでそう聞くと千鶴ちゃんはしゅんとして言った。
「ままのぐあいわるいのに・・・ちー、れなちゃんとあそぶことがうれしいっておもって・・・」
なるほど・・・遥香さんが大変な時にこんなことしていいのか悩んでいるのか。まあ、そうだよね。少しは色々言えるようになっても千鶴ちゃんが抱え込んじゃうのは無理もないか。
俺は千鶴ちゃんの頭を撫でると苦笑して言った。
「千鶴ちゃんは本当に優しいね。でも、そうやって自分だけで抱え込むのはママそっくりで良くないね」
「ままと?」
「うん。あのね、千鶴ちゃん。子供が親に我儘言うのは当たり前のことなんだよ。もちろん我慢できるならするのもいいけど・・・こういうことで我慢することはないんだよ」
まあ、これが同じ年頃の何も考えずにはしゃぐ子供ならまた別の言葉をかけるけど・・・千鶴ちゃんとレナちゃんが遊んでも本を読んだりと静かなことしかしないだろうし、何より遥香さんはこういう時絶対に我慢させる方が辛いだろうからね。
「千鶴ちゃんが優しいのはパパもママも凄く嬉しいよ。でもね、自分を押し込めてまで我慢することはないんだよ。パパもママも千鶴ちゃんが本当にやりたいことなら拒否したりしないからね」
「ぱぱ・・・」
歩みを止めてから、両手を広げる千鶴ちゃん。それが無言の抱っこの合図だと悟って俺は千鶴ちゃんを抱っこすると、千鶴ちゃんはぎゅっと俺に抱きついて言った。
「ぱぱ・・・だいすき」
「うん、パパも千鶴ちゃん大好きだよ」
人間というのはある程度の年齢で人格が固定されるそうだ。俺が今更イケメンになろうとしてもなれるものじゃない。でも、千鶴ちゃんはまだ大丈夫。だから、俺は千鶴ちゃんの無理してまで我慢する癖を少しでも和らげる。
遥香さんは俺がどうにでも察して甘やかせる。千鶴ちゃんに色々と親らしいことが出来るのは今だけだろう。だから、俺たちの前で無理はしなくていいと伝える。ないとは思いたいが、学校とかでイジメにでもあった時にこれは後々効いてくると思う。
イジメを話せない子供の心境の何割かは、親に申し訳ないとか恥ずかしいとか、我慢の割合が大きいしね。だから親として話せる範囲で話せるような関係を目指す。隠し事をしてもいい。でも、辛いことを我慢することはないとそう伝えたいのだ。まあ、これもかなり俺は我儘かもしれないけどね。




