468 悪阻
(;〰;)ツラタン
「ただいま・・・」
「お帰りなさ・・・って、大丈夫ですか?」
それは、いつも通り遥香さんの帰宅を出迎えた時のことだった。明らかに顔色が良くない遥香さんはそれを我慢するような表情を浮かべていたのだった。もしかしてこれは・・・
「悪阻ですか?」
「多分な・・・」
「いつ頃からですか?」
「昼過ぎくらいだ。昼戻してな」
「食欲ありますか?」
「悪いがない・・・」
しんどそうな遥香さんを俺はお姫様抱っこで寝室まで運んでから着替えさせてベットに寝かしつけた。こればっかりは俺に出来ることは少ないからなぁ・・・
「飲み物は飲めそうですか?」
「少しなら・・・」
「あ、アイスとゼリーは買ってありますよ。水分補給はしないといけないし、多少は気分も良くなるかもしれません」
「任せる・・・」
シャーベット状のアイスを取りに冷蔵庫まで行くと、くいくいと服を引っ張られる。そちらを見ると千鶴ちゃんが心配そうな表情を浮かべていた。
「まま、びょうき?」
「違うよ。赤ちゃんが出来るとああして少し具合が悪くなるんだよ。でも、安静にしてれば良くなるから大丈夫だよ」
そうして千鶴ちゃんの頭を撫でて安心させてから、アイスを寝てる遥香さんにゆっくり食べさせる。お風呂に入るのは・・・無理そうだな。そう思って俺は落ち着いてから遥香さんの体を温かいタオルで拭くことにした。
「すまんな・・・」
「気にしないでください。夫婦なんですから」
もちろん肌にドキドキしそうになるのはなんとか抑えた。遥香さんは俺達の新しい家族のために頑張ってくれてるんだ。そんな欲望を出すことは許されない。
「何か欲しいものとかして欲しいことあったらなんでも構いませんので言ってください。なんでもしますから」
「じゃあ・・・手を握ってくれるか・・・」
「分かりました」
震える手を優しく握る。まあ、体調不良の見本市みたいなものだしむしろ我慢してる遥香さんは本当に凄いと思う。
「お前の手は落ち着くな・・・」
「いつまでも握ってますよ。あと、仕事は無理せずに休む時は休みましょう。行くなとは言いませんから、無理はしないでください」
「ああ・・・わかったよ・・・」
「約束ですからね」
そうして遥香さんが寝るまで手を握るのだった。本当にこの程度のことしか出来ない自分の無力さが悔しいものだ。俺に出来ることはこうして少しの手伝いだけ。それでも、少しでも遥香さんが楽になるならなんでもするつもりだ。それが、夫として、家族としての俺の務めだしね。




