466 満開の桜と
唐突だけど
「これは・・・凄いな」
前にも来たことがある桜の隠れた名所。お弁当を持って今日も俺の運転する車で来て実際に桜を見て俺たちは感嘆の言葉を発していた。
毎年見ててもやっぱり、満開の桜というものは美しいものだ。でも、そうか桜か・・・
「遥香さん。提案があるんですが」
「なんだ?」
「その子の名前・・・男の子なら、桜花。女の子なら桜にしませんか?」
その言葉に驚いたような表情を浮かべる遥香さん。その後にくすりと笑って言った。
「随分早い命名だな。何か理由があるのか?」
「いえ、この子の予定日は多分桜の季節じゃないでしょうが・・・俺にとって春って幸せの象徴みたいなものなんです」
去年、進路希望調査に『主夫』と書いてから始まった遥香さんとの関係。そして今年めでたく入籍して、子供まで早くに授かったのだ。これが幸せと言わずになんと呼べばいいのか。
それに春と共に訪れた幸福、1年の楽しみでもある桜の季節だし思わずそんな提案をしたのかもしれない。桜は儚いっていう人もいるかもしれないけど・・・俺は逆に1年でまた咲く桜は強いものだと思う。だから・・・
「春に訪れた幸福で、強くて心の綺麗な子になって欲しい・・・そんな願いがあるから思わず言っちゃいました。でも、遥香さんにも・・・それに、千鶴ちゃんにも意見があるでしょうし参考程度で構いません」
「はぁ・・・分かってるだろ?反対する理由はないさ。それに、ちーちゃんの名前は私が考えたからな、順番的にはお前が適任だろ」
「ちーもいいよ。さくら〜よしよし」
遥香さんのお腹を撫でながら早速女の子の名前を呼ぶ千鶴ちゃん。いやぁ、男の子で桜花の可能性もあるのだけど・・・何故か千鶴ちゃんは確信したように桜呼びを繰り返していた。
「んじゃ、その次はちーちゃんが名付けするとして、その次は私で、その次が健斗だな」
「それは・・・頑張らないといけませんね」
最低あと3人分の予約が入ってしまった。まあ、子供なんてそんなにポンポンは出来ないだろうけど・・・遥香さんが大変そうだし少しは自重するように頑張らないとね。
「案外双子だったりしてな。桜と桜花」
「それはそれで嬉しいですけど・・・出産大変そうですね」
「まあ、その時は頑張るさ。お前との可愛い子供だからな」
「ありがとうございます」
そうして仮にではあるが、名前の候補が決まったのだった。男の子なら桜花、女の子なら桜。まあ、どっちもはないとしても・・・なんか、千鶴ちゃんの桜呼びで女の子になりそうなので俺も心の中では桜と呼ぶことにしようと密かに決めるのだった。




