463.5 元教え子からの相談
「なるほど・・・中条からのアプローチがなかなかないと」
「はい・・・私、魅力ないのでしょうか?」
健斗と雅人が話してる頃、水瀬からまさにドンピシャな相談を受けていた遥香は少しだけ意外に思っていた。中条雅人といえば、かなり女生徒との交際が活発だった印象なので余計にそう感じるのだろう。
「そうではないだろうな。まあ、おそらくそれだけ大切にされてるのだろう」
「そう・・・なんですかね」
「ああ。健斗なんかは本当に私に1年間手を出さずに高校卒業したしな」
まあ、遥香的にも時々我慢が出来なくなったが・・・健斗の初な反応がなんとも嬉しかったのは否定できない。
「ま、何れにしてもそれはなんとかなるだろうな」
「そうなんですか?」
「多分な」
健斗から雅人に発破をかけているだろうから問題ないと遥香は考えていた。
「それで?もう1つの方はなんだ?」
「えっとですね・・・今更なんですが、自分の進路に迷い始めました」
「お前は・・・確か中条と同じ学科に行ったんだったな」
「はい。中条くんと一緒にいたくて。付き合えてからは、本当に夢のようだったんですが・・・時々考えるんです。私は本当に今のままでいいのか」
漠然とした不安。若者特有のそれは、しかして教師には本来打ち明けられないような言葉だろう。
「お前はどうしたいんだ?」
「私は・・・中条くんとずっと一緒にいたいです」
「ならそれでいいだろう」
「でも・・・」
「共働きはもちろん立派だが、家を守るのも仕事だ。少なくとも働く側からすれば家にいて出迎えてくれる存在というのは本当にありがたいものだ」
そう、健斗という存在がいたから遥香はこの1年頑張れたのだろう。隣でジュースを飲む千鶴に関してもそれは言えるだろう。お金は稼がないと生きていけない。でも、家を守る人が居ないのも問題だ。心の支え、そういうものがあるかないかで人は精神的に違ってくるのだろう。
どれだけ仕事が好きでも、ご飯を作ってくれたり、お風呂を用意してくれたり、洗濯をしてくれたり、耳掃除をしてくれたり、添い寝をしてくれたり・・・そういうあらゆるものが無いとやはり辛いものだ。
「まあ、まだ時間はある。焦らず選ぶといい」
「・・・ありがとうございます。あの先生、時々お話に付き合って貰えませんか?」
「構わんが・・・私でいいのか?」
「先生だからこそです。それに彼氏の親友の奥さんですから」
「なら仕方ないな」
そうしてこの時から、水瀬と遥香がちょくちょく連絡を取るようになるのだが、今の健斗達は知る由もなかった。




