450 少しの欲
ちょこっと
学年も上がって今日から千鶴ちゃんも年長さん。最高学年になったことで色々ありそうだけど、お姉さんというポジションがわりと好きみたいな千鶴ちゃんにはいいことなのかもしれない。
「ぱぱ、いってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
保育園の前まで来てからそうして見送ろうとすると、やっぱり少しだけ離れがたそうにしていた。最近たまにあることだけど、前より千鶴ちゃんが俺にベッタリになってきた証拠だろう。
本人も俺が困るようなことをしたくないと前は自重していたが・・・その必要がないと分かってきて少しだけ表に出やすくなったのだろう。
「あー!ちづるちゃん、あにきにべったりあまえてるー!だっさーい!」
誰だったか忘れたけど・・・多分千鶴ちゃんと同じ学年の子かな?お母さんが叱りつけているけど、俺はそれに微笑んで言った。
「正義のヒーローが最も愛するものが愛情なんだよ。愛情っていうのは本当に大切だからあるものなんだ。だから甘えてるのはダサくないさ。むしろ甘えない方がダサいよ」
そう言うと黙り込むその子。子供のうちはそんな下らないことを気にするけど、本当に甘えたくても甘えられない人も多いんだ。少なくとも俺は海斗に父さんにそれを作ろうと努力したけど・・・やっぱり母さんには敵わないからね。
だから、甘えられるうちに甘えるのが一番だ。
「帰ったら沢山遊んであげるからね。今は皆と一緒に遊んでおいで」
「うん・・・ぱぱ」
「ん?なに?」
「ぎゅっー」
抱きついてくる千鶴ちゃんを俺も優しく抱きしめる。微妙に目立ってるけど・・・まあ、むしろいい宣伝になるかもね。一応今までの俺の行動で変な誤解はされにくくなってそうだけど、千鶴ちゃんと本当に親子になったんだと分からせたいしね。
「かえったら、だっこしてね」
「もちろんだよ。約束だ」
「うん、やくそく」
抱きしめを解除して小指で約束をする。そうしてようやく千鶴ちゃんが歩いていって先に来ていたレナちゃんと話すのを確認してから俺もその場を離れる。別に離れ難いのが千鶴ちゃんだけではないのだ。
俺だって可愛い娘と嫁とずっと一緒にいたいと強欲にも思ってしまう。だけど、人の世界で生きるにはそれは難しい。だから、それらもバランスをとってやるべきだと俺は思う。
「さて・・・戻って残った家事やったらバイトに行くとしますか」
俺には俺のやることがある。主夫として出来ることと、夫としてしたいこと。やりたい事は無限にある。学生気分は終わりだ。夫として主夫としてやることをやるだけだ。そのご褒美に2人を愛でるのはありだよね?




