423 春日和
春も近い
「今年は桜遅いな」
少し遠くまで足を伸ばしてみたが、今年はやっぱり桜の開花が遅いようだ。少し寂しい気もするけど気候の関係だし仕方ない。ポンポンと少し残念そうな千鶴ちゃんの頭を撫でて俺は言った。
「来月になれば綺麗に咲いてるよ。3人でまた来よう」
「ぱぱ・・・うん!」
「その頃には4人になってるかもな」
「よにん?」
キョトンとする千鶴ちゃん。だといいねぇと切に願う。とはいえ結婚式の前に出来るのも悩みどころだよねぇ。一応式は6月に行うのだが・・・まあ、流石にそんなすぐには出来ないだろうしね。気長に待つしかないか。
「ねえ、ぱぱ」
「何かな?」
「だっこ」
「わかったよ」
何の疑問もなくさらっと抱っこしてしまった。まあ、可愛い娘からの要求なら断れないよね。その光景に遥香さんは苦笑して言った。
「ちーちゃんは本当に甘えんぼうだな」
「むー、ままもぱぱにあまえてるもん」
「かもな。じゃあ、私はもう片方の腕を貰おう」
そうして千鶴ちゃんを抱っこしながら遥香さんと腕を組むけど・・・まあ、両手に花とはこのことだよねぇ。まあ、これ顔面から転んだらガチで悲惨だけど・・・千鶴ちゃんを抱っこしてて俺が転ぶことは有り得ないので大丈夫だ。
春休みに入ってるからか、思ったよりも親子連れが目立った。俺達もそう見えるかな?まだまだ新米だけどこれでも父親と夫なんだよねぇ。
「ねえ、ぱぱ。あれなあに?」
「ん?ああ、ケバブの屋台だね」
「おいしいの?」
「うーん、千鶴ちゃんと遥香さんは少し苦手なものがあるかな」
特に野菜は苦手なものが多いかもしれない。
「隣の串焼き食べる?」
「たべる!」
「遥香さん。俺のポケットから財布を出してください」
「ん?このくらい払うぞ?」
「ダメです。遥香さんのお小遣いはちゃんと自分のために使わないと。それに食事のお金は俺が持ちますから」
「ぱぱ、あのね・・・ちー、おかねはらってみたい」
そんなことを言う千鶴ちゃんに俺は少し迷ってから言った。
「わかった。じゃあ、パパの財布からここのお金を払ってみて」
「うん!わかった!」
遥香さんから俺の財布を渡されてその小さな手で器用に小銭を数えて店員さんに渡す千鶴ちゃん。やっぱりこの子は頭がいい。もう普通の読み書きと計算なら余裕で出来るのだから大したものだ。これは遥香さんの遺伝が強いのだろうとホッコリしつつも誇らしいと思う。この子には願う進路に進んで心から愛する人と幸せになって欲しいからね。なんたって俺の最愛の娘だしね。
そんな風に親バカしつつ春の訪れを肌で感じるのだった。ちなみに串焼きは美味かった。




