412 卒業式5
おめでとう
「ぱぱ!」
賑わっている表の正門から少し離れた駐車場付近で、俺は千鶴ちゃん達と合流していた。正門に比べて人気が少ないのと、卒業式も終わったという理由で、千鶴ちゃんには特に呼び方の指定はしてなかったけど・・・でも、やっぱりこれからは、これがしっくりくるものだと思いながら、千鶴ちゃんを抱き上げた。
「お疲れ様、千鶴ちゃん。退屈だったでしょ?」
「ううん。ぱぱのがっこうみれてたのしかった」
「・・・そっか」
優しく抱きしめてから、俺はそのまま近くで見ていた瑠美さんに言った。
「千鶴ちゃんのことありがとうございました」
「ちーちゃん、健斗くんが出てきたところで、凄く嬉しそうにしてたよ〜。本当に愛されてるねぇ」
スリスリと甘えてくる千鶴ちゃんが本当に可愛いが俺はとりあえず最後に残ったもう一人を見て言った。
「父さん。忙しいのに来てくれてありがとう」
「おめでとう健斗。結局、最後のイベントしか来れなくてごめんなさいね」
「父さんが忙しいのは分かってるから気にしてないよ。でも・・・最後にこうして来てくれたのは、本当に嬉しいよ」
その言葉に父さんは少しだけ瞳を潤ませてからそっとハンカチで拭って言った。
「この後が本番なのにね・・・ごめんなさい。でも、健斗が立派になって、私も嬉しいのよ」
「そうかな?俺なんてまだまだだよ。でも・・・」
片手に抱いた千鶴ちゃんをチラっと見てから俺は微笑んで言った。
「大切な人と可愛い娘のために、頑張りたいと思ってるよ」
「そう・・・」
「父さん。今日まで俺のこと、育ててくれてありがとう。辛かったのに頑張ってくれて・・・本当にありがとう」
「・・・!?」
その言葉に驚く父さんに、俺は言葉を続ける。
「母さんが死んでから、俺たちのこと見捨てないで頑張って、俺と海斗を育ててくれたこと、本当に感謝してる。この後婚姻届を出したら、俺は本当に結婚することになるけど・・・父さんの息子で良かったと思ってる。父さんと母さんの間に生まれてきて、本当に良かったって。だから・・・ありがとう」
「けん・・・と・・・健斗!」
ガシッと、千鶴ちゃんとは反対方向から抱きついてくる父さんは、目にいっぱいの涙を浮かべながら、俺を抱きしめて言った。
「ごめんなさい・・・沢山苦労をかけて・・・私達もあなたと海斗が息子で、本当に嬉しいの。だから・・・幸せになりなさい」
「・・・うん」
こうして父さんに抱きしめて貰えたのは、いつ以来だろう?母さんが死ぬ前にあったかどうかだ。いつの間にか、俺は父さんの身長を越えており、こんなにも父さんが小さいということを、初めて知ったのだった。




