406 教習所終了
さりげなく
「なんとか間に合ったんだな」
「はい。ありがとうございます」
それは卒業式を数日後に控えた頃のこと。その日ようやく俺は教習所での過程を全て終了して本免の実技を終えて、残りは免許センターでの筆記のみになったのだった。まあ、その筆記は卒業式過ぎないと出来ないのだが・・・それでも卒業式前に何とかそこまで漕ぎ着けたのでホッとする。
「これで後は本当に卒業式だけになったな」
「ですね」
ビールを注ぎながらそう答えると先生は苦笑しながら言った。
「お前の方がマリッジブルーになってそうだな」
「そんなことは・・・いえ、そうなのかもしれませんね」
「素直でよろしい」
マリッジブルーという程のものではないけど・・・この寂しいって気持ちを見抜かれたのはやっぱり先生との繋がりの強さによるかもしれない。
「まあ、結婚が楽しみとはいえ確かにこの関係もかけがえのないものだったからな。お前が寂しいと思うのも分かるが・・・思い出としては残るから大丈夫だ」
「ですね。わかってはいるんですが・・・」
「こればっかりは何を言われても難しいだろうな」
ビールをゆっくりと飲んでから先生はくすりと笑って言った。
「なあ、健斗。私のこと好きなんだよな?」
「はい。もちろんです」
「私もお前のことが好きだ。だから・・・例えどんな関係だろうとこの気持ちは絶対に変わらない」
そう言ってから先生は俺に抱きついてくるとギュッと抱きしめながら言った。
「お前は私のもので、私はお前のものだ。だから何も心配はしなくていいんだ」
「・・・はい。そうですね」
優しく先生を抱きしめつつそう答える。本当に先生はいつだって優しく俺を癒してくれる。俺のこんな弱いところまで見せても幻滅せずに優しく傷を癒すように接してくれるからこそ、俺はこの人のことを好きになったのだ。そして、そんな優しくて自分も手負いのこの人を守りたいと思ったのだ。
ベタ惚れと言われても違和感はない。そうきっと・・・俺はこの人のために生まれてきたのだと言いきれるかもしれない。
しばらくそうしてお互いの温もりを感じていると先生は唐突に顔をあげてから軽く口付けをしてきた。それに驚いていると先生は微笑んで言った。
「本免のご褒美だ。筆記も頑張れよ」
「じゃあ、筆記もクリアして免許取ったらもっと凄いキスを貰えるのでしょうかね」
「その頃にはそのキスも終えてそうだがな」
その先生の笑みで俺は落ち着くのだった。うん、もう大丈夫だ、きっと。何でもできる、そんな気がする。




