403 卒業式の予行練習
もうじき
「うあー・・・卒業式とかダルい・・・」
そんな文句を垂らすのは我らが吉崎氏だ。内定が決まってからピアスを開けて、生徒指導を受けたのを含めてアホなのは仕方ないとして・・・まあ、それでも気持ちは分かるので、ため息混じりに言った。
「高校最後のイベントだし、仕方ないよ」
「なんで俺らと直接関係ない、ジジイの祝いの呪詛を聞かにゃならんないんだよ?頭おかしくね?」
「とりあえず、祝うのか呪うのかは統一しようよ」
ぐてーっと机に突っ伏す吉崎を放置して帰ろうとすると、その前に雅人が近づいてきて言った。
「健斗。明日って何か予定あるか?」
「明日?バイトと家事はあるけど・・・何か用事?」
「少しな。昼は持ってきてるか?」
「いや、帰ってから作るつもりだったけど・・・」
「なら丁度いい。奢るからそこで話すぞ」
面倒事・・・では無さそうか?雅人がこうして回りくどくする場合は面倒事ではなく、なんとなく気恥しいことを頼むためだろうと、長年の勘でわかった。これでも一応親友だしね。
「わかった。それなら遠慮なくゴチになります」
「決まりだな。それと確認しておくが・・・」
「わかってる」
近くで聞いてる吉崎と、珍しく早く帰った斉藤には秘密、ということだろう。まあ、斉藤はともかく、吉崎がいると、話せないことも多いしね。友人とはいえ、話せることには限度があるし。その吉崎は、疲れた疲れたとずっと呟いてるが・・・暇なのかな?
「んで?なんか食べたいものあるか?」
「んー・・・特には。雅人は?」
「別にどこでも大丈夫なんだが・・・近くのファミレスにでも行くか」
「じゃあ、そうしようか」
荷物を纏めてクラスメイトに挨拶をして、2人で教室を出る。そういえば、雅人と2人でご飯食べに行くのは久しぶりかもしれない。なんだかんだで、こういう時は斉藤も一緒のことが最近は多かったしね。
にしても・・・日を増すごとに卒業が近くに来てるのがわかるからか、色々思うことも増えてきた気がする。卒業自体は喜ばしいし、早く先生と千鶴ちゃんと家族になりたいという気持ちは強いが・・・今の清い関係が終わるのも少しだけ寂しかったりもする。
もちろん早く結婚したいけど・・・なんて言うんだろうなぁ、これも所謂マリッジブルーというものなのだろうか?先生はそこまで気にしてなさそうだから、俺が女々しいだけなのかもしれないけど・・・まあ、この1年の千鶴ちゃんと先生との関係も幸せだったから、名残惜しいと感じるのかもしれないね。そんなことを考えながら、ファミレスへと向かうのだった。




