399 行きはうきうき
うきうき
「ゆーえんち、ゆーえんちー♪」
後ろで嬉しそうに歌う千鶴ちゃんの言う通り、本日は遊園地に行く日だ。うきうきしてる千鶴ちゃんがなんとも可愛らしいと思っていると隣で運転する先生が言った。
「なんというか、我が娘ながら将来有望な歌唱力をしてるよ」
「親バカ丸出しで言えばアイドルとか似合いそうですよね」
「フリフリのステージ衣装着てな。まあ、そんなブラックな道を歩ませたいとは思わないがな」
「今はどんな仕事でもブラックになりがちですからねぇ」
語弊を恐れずに言えば、どんな仕事でも人手も機材も予算も何もかも足りないのが現状だろう。だからどんな仕事でもブラックになってしまいがちだが・・・まあ、千鶴ちゃんにはせめて望んだ道に進ませてあげたいものだ。
「そう考えると主夫や主婦もかなり黒いよな」
「そうですか?」
「年中無休で幼子いれば睡眠時間が消えるしな」
「個人的にはやり甲斐のある仕事なんですがね・・・」
「それはお前が社畜体質だろうからな」
何をもって社畜体質としたのかは疑問だが・・・俺としては愛する人の世話が出来るのにこれ以上の喜びはないと思ってしまうのだ。
「そういや、マニュアルの運転は慣れたか?」
「ええ。最初に路上でエンストさせた時は焦りましたが・・・今は普通に運転出来てます」
仮免を取ったらいよいよ路上での実技が増えるので最初はかなり緊張したが・・・慣れって凄いね。今は普通に運転出来てるよ。
「なら良かった。そのうちお前の運転する車に乗りたいが・・・私がこうしてお前と話しながら運転するのも好きだから悩みどころだな」
「そうなんですか?」
「運転は元から好きだが、お前が隣にいるだけで幸せな気持ちになれるんだよ」
・・・さらっと言う。本当に天然って怖い。まあ、俺としても先生の隣で色々話すのは好きだし、後ろではしゃぐ千鶴ちゃんを見てるのも和むので無理に運転しようとは思わないが・・・免許取ったら腕が鈍らないようになるべく頻繁に運転するようにしようと思う。
「そんなこと言ったら俺は毎日幸せ過ぎて困りますよ・・・」
「かもな。私もこの1年幸せ過ぎたからな」
「これからも幸せにするつもりなのでそこはよろしくです」
「ふふ、プロポーズにしては可愛い台詞だな」
まあ、この程度は想定内。いつも通りの反応だし無理をする必要はない。伝えるべきこととタイミングさえ間違えなければ大丈夫と自分に言い聞かせながら俺は悟られないようにいつも通りの会話をするのだった。




