388 ささやかなご褒美
ご褒美
「ただいまー」
「おかえりなさい、遥香さん」
千鶴ちゃんを迎えに行ってから夕飯の支度をして待っていると少しだけいつもより遅く帰ってきた先生。出迎えると若干疲労があるようだったが俺の顔を見ると微笑んで言った。
「遅くなってすまないな。それで仮免の結果は?」
「メッセージでもお伝えした通りですよ。合格です」
「分かってるさ。ついガッツポーズしそうになったほどだ。なんにしてもおめでとう」
「ありがとうございます。すぐに夕飯の支度をしますね」
「ああ。頼んだ」
やっぱりいつもより疲労の色が見えるような気がするなぁ・・・と、そうだ。
「遥香さん。目を瞑ってください」
「ん?こうか」
「はい。そのままで」
そうしてゆっくりと後ろから抱きしめる。女性らしい華奢な身体は寒空の下冷えきっていたようなので抱きしめると少しだけ冷たかったけどそれでもしばらく抱きしめているとそっと俺の腕に触れてから先生は言った。
「本当にお前はいつも狡いよなぁ・・・」
「嫌でしたか?」
「気を使わせたんだろ?悪いな。ちょっと疲れてた」
「いいんですよ。それを癒すのが俺の仕事ですから」
「なら、もう少しだけこうしてくれ。お前に抱かれているのだと思うと本当に落ち着くからな・・・」
そうしてしばらく抱きしめてから夕飯の支度をした。3人で夕飯を囲む頃には、先生はいつも通りの笑みを浮かべられていた。俺なんかが少しでも力になれるなら、これほど嬉しいことはない。
「ん、そうだ。仮免の合格のご褒美なんかあるか?」
トンカツを食べながらそう聞かれるので、俺は少し迷ってから言った。
「頬っぺにキスが欲しいです」
「こう?」
真っ先に隣にいた千鶴ちゃんに頬っぺにキスをされてしまった。あまりにも嬉しくなるが先生が少しだけ嫉妬しているので微笑んで言った。
「千鶴ちゃんありがとう。じゃあ、遥香さんは後できちんとお願いしますね」
「わかったが・・・お前も本当に欲が無いよな」
「何をおっしゃいますか。俺ほど欲深い人間はそうそういませんよ」
まあ、吉崎とかと比べればあれだけど・・・こうして強欲にも2人と共に居たいと思うのは本当に欲深いと思う。こんな幸せを貰ってる時点で俺は相当欲深いだろう。そんな俺の言葉に先生は苦笑してから言った。
「むしろお前みたいなやつはそうそういないがな」
「そうですか?」
「そうなんだ」
そんな感じでいつも通り食事をしてから、夜は先生の晩酌に付き合って、ゆっくりと試験の疲れを癒すのだった。やっぱり我が家が1番だよね。




