382.5 軽い失恋
「ねぇ、薫ちゃん。本当は健斗くんのこと異性として好きだったりするんじゃないの?」
健斗がお手洗いに席を立つのを確認してから瑠美はそう切り出した。その言葉に薫はキョトンとしてからくすりと笑って答えた。
「はい。勿論です」
「やっぱりねぇ」
「バレてましたか」
「まあ、そりゃあ見てればね。健斗くんの方は大方自己評価が低くて、その可能性を排除してる感じかな?」
的確に言い当てた瑠美に頷いてから薫はため息混じりに答えた。
「彼女さんが現れなければ、近い将来健斗くんに告白しようとは思ってました。まあ、負け惜しみかもしれませんが」
「告白はしないんだ」
「健斗くんを困らせたくないですから。それに千鶴ちゃんのあの笑顔を見ちゃうと、寝とる気にもなりませんよ」
何度かの交流で、薫は千鶴とかなり仲良くなっているので、自然とそんな結論になるのだろう。
「ま、健斗くんが彼女さんと別れたりすれば、狙いますけどね」
「ふふ、それを彼女の妹の前で言うんだ」
「だって、瑠美さんこういうの面白がる人でしょ?」
「まあね」
姉には幸せになって欲しいが・・・それでも、面白いものは面白いと素直に言う。特に他人の色恋は、見ていて飽きないのだ。
「薫ちゃん美少女だし、彼氏くらい簡単に作れるんじゃない?」
「それだと兄と同じになりますから。それに私、家庭的で一途な健斗くんみたいな人が好みなので、同年代だと難しいんですよ」
まあ、確かにそれを求めるには、同年代は幼すぎるかもしれない。むしろ健斗のような希少種を見つけた自分の姉が凄いと、素直に思ってしまう。
「まあ、何にしても健斗くんには内緒ですよ?私、これでも可愛い妹キャラで通してるんですから」
「意外と腹黒いのかな?まあ、言わないけどさ」
「瑠美さん的には、自分の姉が年下の健斗くん掴まえてきたのはどうなんですか?」
「うーん・・・一言で言えばデンジャラスかな?」
まさか、こんなに遥香向きの物件を見つけるとは思わず、むしろ瑠美的には再婚というのが、今でもかなりびっくりなニュースだったりするが・・・まあ、それでも姉が幸せそうなので、良しとする。
「ちなみにバレンタインデーのチョコは義理?」
「義理の皮を被った本命ですよ。毎年そうしてるんですが・・・健斗くん、気づかずに食べちゃうんで残念です」
朴念仁というより、自己評価が低すぎてそんな可能性を排除してるのが健斗なのだろう。まあ、周りにイケメンも多いし、勘違いしない為には必要なスキルなのだろうが・・・それでも、複雑なのは乙女心だったりするのだ。




